日本で暮らす筆者が、通勤電車などで出会った思いがけない出来事を通して、日本の「面白さ」をどう受け止めるかを書いたエッセイらしい課です(語彙からの推測。本文は手元の教科書で確かめてください)。文法は「〜て以来」「何〜も」「移動動詞+ている」のように時間と数をとらえる形と、「ということだ」「までもない」「であろうと」のように書き手の判断を示す書き言葉の二つの群に分かれます。読解では「この・その」が何を指すかを追う練習が、本文の筋を追う力に直結します。
目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 扉(話しましょう) | 15分 | 日本に来て「面白い」「変だ」と思ったこと、驚いたことを出し合う。電車・お酒・席の譲り方など、本文につながりそうな話題が出たら黒板に残しておく |
| 本文の大意 | 30分 | CD か範読で通して読み、段落ごとに「筆者が見た出来事」と「それをどう感じたか」を一言で言わせる。「この」「その」に印を付けさせておく(学習項目3の導入に使う) |
| ことばを確かめよう | 25分 | 語彙リストの読みと意味。本文の語は電車の中の場面に集まっているので、図を1枚描いて場面ごとにまとめ、連語(雰囲気に満ちる・出来事が起こる・座席を押しのける)の形で練習する |
| 学習項目 1〜7 | 105分(1項目15分前後) | 本文の文に戻りながら1項目ずつ。1(以来)と7(移動動詞+ている)は時間の線を板書して「続いている状態」を見せ、3(こ・そ)は本文に矢印を引いて確かめる |
| 内容を確かめよう・精読 | 40分 | 正誤問題→段落の大意→細かい問い。精読では筆者の評価を表す語(好意的・否定的・失礼・からかう)を拾わせ、題の「面白い」に付いたかぎかっこの意味を考えさせる |
| 練習・チェックシート・作文・漢字・プラスアルファ | 55分 | 練習は基本→応用→読もう・聞こう・書こう。チェックシートは課の終わりの小テストに。作文は「私が面白いと思った日本」。プラスアルファ(ステレオタイプ・国民性)は、国の数が多いクラスなら話し合いに広げる |
ある出来事をきっかけにして、そのあとずっと同じ状態や習慣が続いていることを表します。「〜てから」に似ていますが、「以来」は「それからずっと」という継続の意味が強く、後ろには続いている状態やくり返していることが来ます。一度きりの出来事(「〜て以来、一度行った」)には使いにくく、「昨日以来」のようなごく最近のことにも使いにくい形です。書き言葉と、改まった話し言葉で使います。文法の見方では、ある時点を起点として、そこから今までの継続を述べる形です。
Vテ+以来/N+以来(N は「卒業・入学・結婚・あの日」のような出来事や時点を表す名詞。「それ以来」の形もよく使う)
「〜てから」で学生に文を作らせ、後ろが「ずっと続いていること」の文だけ「〜て以来」に替えさせる。替えられない文(一度きりの出来事)を教師がわざと混ぜておき、なぜ替えられないかを言わせる。
「何」+助数詞+「も」で、数ははっきり言わないが「多い」と話し手が感じていることを表します(何度も・何人も・何時間も)。「何十人も」「何百回も」のように十・百を入れると、さらに多い感じになります。☆同じ形で「も」を「か」にした「何〜か」(何度か・何人か)は、「少しだが、いくつか」という少なめの数を表します。「も=多い、か=少し」と対で教えると覚えやすい項目です。文法の見方では、疑問語に助数詞と取り立ての「も」が付いて、数量が多いという話し手の評価を表す形です。
何+助数詞(回・度・人・時間・日・年・社 など)+も/か(「何十〜も」「何百〜も」の形もある)
教師が「3人/30人」「2回/20回」のような数のカードを見せ、学生が「何人か/何人も」で言い分ける。実際の数ではなく、話し手が「多い」と感じるかどうかで決まることを、同じ数を違う場面で言わせて確かめる。
文章の中で、前に出てきたものを指す「この・その・これ・それ」の使い分けを整理する項目です。どちらも前の文に出たものを指せますが、「こ」は書き手が自分の話題として取り上げ、いま中心に述べていること・身近に感じていることを指すときに使い、「そ」は少し距離を置いて前の内容を受けるときに使う傾向があります。読むときは「この」「その」が何を指しているかを探す練習が大切です。☆会話では「そ・あ」の使い分けがあり、話し手と聞き手の両方が知っていることは「あ」、どちらか一方しか知らないことは「そ」で指します。文法の見方では、文章の中のつながり(文脈指示)をつくる指示語の使い分けで、目の前の物を指す使い方(現場指示)とは分けて扱います。
(文型ではない)この/その+N、これ/それ(指す相手は前の文の名詞、または前の文の内容全体)
本文の段落を1つ選び、「この」「その」を空欄にしたプリントを配って埋めさせる。答え合わせでは、どちらを入れたかより「何を指しているか」を必ず口で言わせる。
前に述べた事実や状況をもとに、「つまり、こういうことだ」と結論や解釈を引き出して言う形です。「つまり」「要するに」と一緒に使うことが多く、相手の長い話をまとめ直して確認するときにも使えます。同じ形の「〜ということだ」には「〜そうだ」と同じ伝聞の意味もありますが、この課では結論の意味を扱います。文法の見方では、話し手の判断を表す文末の形(モダリティ)で、「つまり」「要するに」のような言い換えの接続詞と組んで、前の内容から導いた結論を示します。
普通形+ということだ(な形容詞・名詞は「〜(だ)ということだ」で、「だ」はあってもなくてもよい。話すときは「〜ということです」「〜ってことだ」)
事実を1〜2文書いたカードを配り、「つまり、〜ということだ」で結論を言わせる。結論が事実から離れすぎていないかをクラスで確かめ、離れていたら「それは分からない」と言って戻す。
「わざわざ〜するほどのことではない」「〜しなくても分かる・できる」という意味です。そのことが簡単・当然・小さいことなので、その行動は要らない、と言います。「〜必要はない」に近いですが、「それほどのことではない」という評価が入る点が違います。「言うまでもない」は決まった言い方です。「Vルまでもなく〜」は「〜するまでもなく、…だ」と文を続ける形で、「その行動をしなくても、…」という意味になります。文法の見方では、必要がないことを述べる形に、話し手の評価(その程度のことだ)が加わったものです。
Vル+までもない/Vル+までもなく+文(辞書形に付く。ナイ形・タ形には付かない)
学生が「〜したほうがいいですか」と聞き、相手役が理由を付けて「〜するまでもない」で返す。理由が「簡単・当然・小さいこと」になっているかを確かめ、大事なことに使っていたら「必要はない」でもきついと気づかせる。
「どんな理由であろうと」「何歳であろうと」のように、「どんな場合でも関係なく、結果は同じだ」と言う書き言葉です。「〜でも」「〜であっても」を硬くした形で、規則・意見文・スピーチに向きます。「であろうと」は「だろうと」の書き言葉の形です。☆「N1であろうと、N2であろうと」は2つを並べて「どちらの場合も同じだ」と言う形で、「N1でもN2でも」の意味になります。文法の見方では、どんな条件でも結果が変わらないことを述べる逆条件(譲歩)の形で、「〜ても」の書き言葉的な仲間です。
疑問語(どんな・何・いつ・どこ・だれ)+N+であろうと、〜/N1であろうと、N2であろうと、〜(「〜であろうが」「〜だろうと」の形もある)
「〜でも」の文を「〜であろうと」に書き換えさせ、続けて後ろの文を自分の生活に合わせて作らせる。後ろが「どの場合でも同じ結果」になっているかを確かめる。
「来る・行く・帰る・入る・出る・着く」のような移動を表す動詞に「ている」が付くと、「移動している最中」ではなく、「移動したあとの状態がそのまま続いている」ことを表します。「田中さんは大阪に行っている」は「今、大阪にいる」の意味です。「食べている」(進行中)と同じ形なので、意味の違いに気づかせる項目です。☆同じ形が、「多くの外国人が日本に来ている」のように主語が多数で出来事がくり返されるときは、「状況が動いている・変わりつつある」という意味で読めることがあります(一人の状態ではなく、全体の傾向)。文法の見方では、「〜ている」のうち結果の状態(結果残存)を表す用法で、移動動詞では移動が終わったあとの状態を表します。
移動動詞(来る・行く・帰る・入る・出る・着く・戻る)のテ形+いる
「〜さんは今どこにいますか」の質問に、移動動詞+ている で答えさせる。そのあと「今何をしていますか」に「食べている」などで答えさせ、形が同じで意味が違うことを並べて比べる。
この課の新出語は 135 語(本文を読むための語 29・練習などの語 106)。1語ずつの意味・いっしょに使う助詞と連語・例文は語彙のページにあります。
本文の語は「通勤電車・雰囲気・酒臭い・座席・押しのける・反対側」のように電車の中の場面に集まっているので、図を1枚描いて場面ごとにまとめて導入できます。評価の語(好意的・否定的・失礼・からかう)は、精読で筆者の立場を読むときの手がかりになります。練習の語には「〜社・〜通・〜割」のような助数詞的な語が多く、学習項目2「何〜も」の材料にできます。語彙の一覧は別ページに分けています。
日本で暮らす筆者が、通勤電車などで出会った思いがけない出来事を通して、日本の「面白さ」をどう受け止めるかを書いたエッセイ、という話題の課と推測されます(本文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください)。大意では段落ごとに「筆者が見た出来事」と「それをどう感じたか(好意的か否定的か)」を分けて言わせると、題の「面白い」に付いたかぎかっこの意味を考えさせられます。精読では学習項目3の「この・その」が指すものを線で結ばせ、学習項目1・7の時間の表現(以来・移動動詞+ている)で出来事の前後関係を確かめると、文法と読解が一度に進みます。
チェックシート(2択)を宿題にして次のコマの最初に答え合わせ。漢字練習は「ルビなし本文」を声に出して読めるところまで。作文は「私が面白いと思った日本」で、書き出しを「日本に来て以来、〜」にし、途中で「つまり、〜ということだ」を1回使わせる。次のコマはプラスアルファ(ステレオタイプ・国民性の語)を話し合いに使い、第4課へ。
『中級を学ぼう 中級前期』第3課は何コマで終わりますか?
90分のコマなら3コマが目安です。1コマ目で扉・本文の大意・ことば、2コマ目で学習項目1〜7、3コマ目で内容の確認・精読・練習・作文の準備に当てると無理がありません。学習項目が7つと多いので、☆の発展項目(何〜か・会話の「そ・あ」・状況の変化の「ている」)は読んで分かればよい扱いにすると時間に収まります。
「〜て以来」と「〜てから」の違いはどう説明すればいいですか?
「〜てから」は順番を言うだけで、後ろに一度きりの出来事も来ます。「〜て以来」は「それからずっと」で、後ろには今まで続いている状態や習慣が来ます。「日本に来てから、一度京都に行った」は言えても、同じ文を「来て以来」にすると不自然になる、という一組を見せるのが早い説明です。
「何回も」と「何回か」はどう教え分けますか?
数の線を板書して、「何〜か」は少ないほう(2〜3くらい)、「何〜も」は話し手が多いと感じているほう、と左右に置きます。実際の数ではなく話し手の感じ方で決まることを、同じ3回を「何回も」と言う人と言わない人がいる場面で確かめます。「何十人も・何百回も」は「何〜も」のあとに足します。
文章の中の「この」と「その」はどちらを使えばいいと説明しますか?
どちらも前に出たものを指せるので、正解は一つに決まらないことが多いと先に伝えます。そのうえで、書き手が話題の中心にして続けて述べるものは「この」、前の内容を少し離れて受けて次へ進むときは「その」が選ばれやすい、という傾向として示します。会話では、二人とも知っているものは「あ」、片方しか知らないものは「そ」と、別の基準になることも分けて板書します。
移動動詞の「〜ている」(行っている・来ている)はどう導入しますか?
教室にいない人の居場所を聞く場面が使いやすいです。「山田さんは今、銀行に行っています」は「今、銀行にいる」という意味だと、時間の線で「着いたあとの状態」に色を付けて見せます。同じ「〜ている」でも「食べている」は動作の途中なので、二つを並べて比べると違いが残ります。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。