中級を学ぼう 中級前期 第5課「私の町」の教案
『中級を学ぼう 日本語の文型と表現56 中級前期 第2版』
自分の住む町を歩きながら描写する、エッセイ風の読み物の課と見られます(住宅街・商店街・池沿いの小道・落ち葉・息抜き、といった語が並びます)。学習項目は「つつある」「を中心に」「Vタところに」のような町や変化を描写する書き言葉の形と、「Nらしい」「〜げ」のような様子を外から言い表す形の2つのまとまりで、その間に「意志動詞・無意志動詞」の整理が入ります。文型は6つと少なめなので、描写の表現を作文(近況を伝える手紙)まで持っていくことを芯にすると、課のまとまりが出ます。
このページについて教科書の本文・例文・設問は載せていません。例文と場面はすべて自作です。項目番号は教科書の「学習項目」の番号に合わせています。
学習項目6時間90分×3コマ語彙117語
この課のねらい(Can-do)
- 町や社会の変化を「〜つつある」「Nを中心に」で書き言葉として描写できる
- 「Vタところに/で」で、道順や場所を人に説明できる
- 意志動詞と無意志動詞の違いを知り、意向形・つもり・命令形などが使える動詞かどうかを自分で判断できる
- 「Nらしい」「〜げ」で、人や季節や町の様子を、見た印象として言い表せる
進め方と時間配分
目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
| 扉(話しましょう) | 15分 | 扉の語(住宅街・商店街・高層ビル・団地)を使って、自分の住む町や国の町がどんな所かを出し合う。「駅の近くに何がある?」と聞いて場所の言い方を引き出しておくと、学習項目3(Vタところに)につながる |
| 本文の大意 | 25分 | 通して読み、「筆者はどこを歩いて、何を見ているか」を段落ごとに一言で。変化を言っている文(「〜つつある」)と、場所を言っている文(「〜たところに」)に印を付けさせておく |
| ことばを確かめよう | 30分 | 語彙リストの読みと意味。本文の語は連語の形(日を浴びる・空気に包まれる・たたずまいを漂わせる)で練習する。「半ば」「幾分」「何だか」のような程度・気分の副詞は、文の中での位置を見せる |
| 学習項目 1〜3(変化と場所を描写する書き言葉) | 60分 | 本文の文に戻りながら1項目ずつ。1(つつある)と2(を中心に)は町の変化と広がり、3(Vタところに/で)は道順と位置として、黒板の町の地図1枚で続けて扱う |
| 学習項目 4(意志動詞・無意志動詞の整理) | 30分 | 板書で動詞を2列に分け、既習の文型(意向形・つもり・命令形・〜ために/〜ように)と結びつける |
| 学習項目 5・6(見た印象を言う形) | 40分 | 5(Nらしい)と6(〜げ)を「見た印象を言う形」として続けて扱う。写真と表情の絵を使い、性質(らしい)と気持ちの表れ(げ)を並べて見せる |
| 内容を確かめよう・精読 | 30分 | 正誤問題→段落の大意→細かい問い。精読では、筆者の歩いた道順を簡単な地図に描かせ、「Vタところに」が指す場所を確かめる |
| 練習・チェックシート・作文・漢字 | 40分 | 練習は基本→応用→読もう・聞こう・書こう(練習の語から、町の都市化や鉄道・首都の位置を扱う文章が入ると見られる)。チェックシートは課の終わりの小テストに。作文は作文の語(近況・日増しに・色づく・くれぐれも)から、季節と近況を伝える手紙の形。プラスアルファは位置の言い方(正面・向かい・斜め・面する) |
学習項目 1 Vマスつつある(=だんだん〜ている)
意味・はたらき学習項目 1
ある変化が今まさに進んでいる途中だ、という意味の書き言葉です。「増える」「減る」「変わる」「なる」「広がる」のような、変化を表す動詞に付きます。「〜ている」との違いは、「壊れている」が「もう壊れた状態」を表すのに対し、「壊れつつある」は「壊れる途中」を表す点です。新聞・レポート・説明文で使い、会話では「だんだん〜てきている」のほうが自然です。
接続
Vマス形(「ます」を取った形)+つつある(増え+つつある・変わり+つつある・なり+つつある)
形
Vマス つつあるNになりつつある/い形く なりつつある〜つつあった(過去)
導入
- 町の変化の写真を2枚並べる学校の近くの町の「昔」と「今」が分かる写真(または簡単な絵)を並べ、「今、この町はどうなっていますか」と聞く。「ビルが増えている」が出たら「ビルが増えつつある」と板書し、「今も増えている途中」という意味を矢印で示す。本文の中で変化を言っている文に印を付けていれば、そこへ戻って確かめる。
- 「〜ている」との線引き「この店は閉まっている」と「この店は閉まりつつある」を並べ、どちらが「もう閉まった」か聞く。「つつある」は変化の途中、「ている」は変化が終わった状態(または動作の継続)だと分ける。会話では「だんだん〜てきた」と言うことも添える。
板書案
Vマス + つつある(書き言葉)
駅前に 高いビルが 増えつつある。
〔矢印〕昔 ──→ 今(まだ途中)──→ これから
〔赤〕つつある=変化の途中 〔青〕ている=変化のあとの状態
話すとき → だんだん〜てきている
場面と発話(自作)
- 作文で、自分の国の首都の様子を書く。私の国の首都では、古い家が減り、高いビルが増えつつある。
- 会社の会議資料に、客の年齢層の変化を書く。若い客の割合は、年々小さくなりつつあります。
- レポートで、日本に来てからの自分の変化をまとめる。日本の生活に少しずつ慣れつつあるが、敬語はまだ難しい。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
「増える・減る・変わる・なる・広がる・進む」の6語をカードにし、学生に自分の町について1文ずつ「〜つつある」で言わせる。続けて同じ文を「だんだん〜てきた」に言い換え、どちらが話し言葉かを確かめる。
- 口頭教師が主語と変化の動詞をカードで出す(「留学生・増える」「町・静かになる」「気温・上がる」「個人の店・減る」)。学習者は「留学生が増えつつある」と全体で言い、次に個人で言う。続けて教師が「だんだん〜てきている」の話し言葉の文を言い、学習者が「〜つつある」の書き言葉に直す。
- ペアAは「10年前の町」の絵、Bは「今の町」の絵を持ち、相手に見せずに「駅の前には何がありますか」と聞き合って違いを探す。見つけた違いを2人で「〜つつある」の文にして書き、絵を替えて役を交替する。
- 産出「わが町の今」レポート。自分の国の町か今住んでいる町の変化を3つ選び、「〜つつある」と「〜を中心に」を使って150字ほどで書く。教師は、付けた動詞が変化を表す動詞か、「〜ている」で済む状態の文に使っていないかを見て直す。
つまずきと手当て
- 「食べつつある」「勉強しつつある」のように、変化でない動詞に付ける。変化の動詞に限ると板書に残す(「〜つつ」だけの「〜しながら」とは別の形だと言う)
- 「壊れつつある」を「もう壊れた」の意味で使う。変化の途中であることを矢印の図で見せる
- 会話で多用して硬くなる。話すときは「だんだん〜てきた」でよいと言う
既習の文型との違い
- Vテいる(初級)「〜ている」は変化が終わったあとの状態(窓が開いている)や動作の継続を言い、「つつある」は変化の途中だけを言います。「人口が減っている」は会話でも文章でも使えますが、「減りつつある」は文章向けで、いまも進んでいる途中だと強く示します。学習者は「今ご飯を食べつつある」のように動作の進行に使いがちなので、変化の動詞に限ると直します。
- Vテくる(第7課)変化の「〜てくる」も、変化がいまに向かって進んできたことを言い、「増えてきた」は会話で自然です。「つつある」はいまの時点で進んでいる途中に焦点があり、硬い文章で使います。作文で同じ内容を「増えてきた」「増えつつある」の両方で書かせると、文体の違いがつかみやすくなります。
- Vマスつつ(=〜ながら)「ある」の付かない「〜つつ」は、「音楽を聞きつつ歩く」(同時の動作)や「悪いと知りつつ遅刻した」(けれども)の意味になり、「つつある」とは別の形です。混ぜると意味が通らない文が出るので、「ある」まで付いたら変化の途中、と形で分けて板書します。
関連する文型
学習項目 2 Nを中心に(=〜を基点にして)
意味・はたらき学習項目 2
あるものを真ん中・いちばん大事なものとして、そのまわりに範囲や活動が広がる、という意味です。「駅を中心に店が集まる」のような場所の広がりにも、「若者を中心に人気がある」のような人や物事の範囲にも使います。あとに動詞が続くときは「〜を中心に」、名詞を修飾するときは「〜を中心とするN」「〜を中心としたN」の形になることが多いです。
接続
N+を中心に(して)/N+を中心として/N+を中心とするN(「〜を中心にしたN」「〜を中心としたN」も使う)
形
Nを中心に 〜Nを中心として 〜Nを中心とする/とした N
導入
- 黒板に町の地図を描く黒板の真ん中に「駅」と書いて丸で囲み、そのまわりに学生に店や建物を言わせて書き足す。「駅を中心に店が集まっています」と板書し、「中心」の字を指して真ん中の意味を確かめる。次に「学生を中心に人気がある」と書き、場所でなく人の範囲にも使うことを示す。
板書案
N + を中心に 〜(動詞)
N + を中心とする/を中心とした + N
〔図〕◎駅 のまわりに 店・店・店(駅を丸で囲む)
駅を中心に 商店街が 広がっている。
〔青〕場所(駅を中心に) 〔赤〕人・物事(学生を中心に人気)
場面と発話(自作)
- 作文で、自分の町の様子を紹介する。私の町は、古い寺を中心に商店街が広がっている。
- アルバイト先の店長に、どんな客が多いか聞かれて答える。この店は、近くの大学の学生を中心に、若い人がよく来ます。
- 会社の会議で、来年の計画を説明する。来年は、留学生向けのサービスを中心に事業を広げたいと考えています。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
学生に自分の国の有名な町を1つ選ばせ、「〜を中心に」で町の様子を2文書かせる。1文は場所(川を中心に)、1文は人や物事(観光客を中心に)にすると、2つの使い方が一度に練習できる。
- 口頭教師が「中心」と「広がるもの」の組をカードで出す(「駅・店が集まる」「大学・アパートが多い」「若い人・人気がある」「週末・観光客が来る」)。学習者が「駅を中心に店が集まっている」と全体、個人で言う。次に教師がその文を言い、学習者が「駅を中心とした商店街」のように名詞を修飾する形に言い換える。
- ペアガイド役と旅行者役。ガイドは自分の国の町の地図を紙に描きながら「〜を中心に」で町を説明し、旅行者は「どこを中心に回ればいいですか」「どんな人を中心に人気がありますか」と質問する。2分で役を交替する。
- 産出「町の紹介パンフレット」。自分の町を紹介する案内文を100〜150字で書き、場所の「〜を中心に」と人・物事の「〜を中心に」を1つずつ入れる。教師は、名詞の前で「〜を中心とする/とした」に変えているか、1つの文に「〜を中心に」を2つ入れていないかを見る。
つまずきと手当て
- 「〜を中心に」のあとを名詞で止める(「駅を中心に店」)。名詞を修飾するときは「〜を中心とする店」の形にすると示す
- 「中心に」を「中に」と混ぜて「駅の中心に店がある」と書く(駅の真ん中、という別の意味になる)。「Nを中心に」は助詞「を」だと押さえる
- 何でも「〜を中心に」にして、1つの文に2つ入れる。中心は1つの文に1つ、と言う
既習の文型との違い
- Nとともに(=〜と一緒に)(第4課)「Nとともに」は2つのものが並んで一緒に動くことを言い、どちらが真ん中かは言いません。「Nを中心に」は1つを真ん中に置き、そのまわりに範囲が広がる形です。「友だちとともに町を歩く」と「留学生を中心に人を集める」を並べると、横に並ぶか、まわりに広がるかの違いが見えます。
- Nの中心に(名詞+の+中心)「町の中心に広場がある」は「町の真ん中の場所に」という位置の言い方で、そこに何があるかを言います。「町を中心に」は町を基点にまわりへ広がる様子を言います。助詞が「の」か「を」かで意味が変わるので、板書で助詞に色を付けて見せます。
関連する文型
学習項目 3 Vタところに(=場所に)
意味・はたらき学習項目 3・☆
「〜たところ」が場所を表す使い方です。「駅を出たところに」は「駅を出た、その場所に」という意味で、道順や物の位置を説明するときに使います。「出る・曲がる・渡る・上がる・進む」のような、動くことを表す動詞に付きます。☆の「Vタところで」は、同じ場所を「で」で受けて、そこで何かをする(待つ・会う・写真を撮る)と言う形です。時間の意味の「〜たところだ(〜したばかり)」「〜たところで(〜しても無駄だ)」とは別の使い方なので、分けて扱います。
接続
Vタ形+ところに(場所+に:ある・いる・見える)/Vタ形+ところで(場所+で:待つ・会う・する)。動きを表す動詞に付く
形
Vタ ところに 〜がある/いるVタ ところで 〜するVタ ところを 曲がる/Vタ ところから 見える(ほかの助詞も同じ仲間)
導入
- 教室から学校の入口までの道順を言わせる「教室を出て、まっすぐ行くと階段がありますね」と確かめながら、「教室を出たところに階段があります」と板書する。「〜たところ」が「出た、その場所」を指していることを、黒板の図に点を打って見せる。次に「階段を下りたところで待っていてください」と、同じ場所を「で」で受けて動作を言う形(☆)に広げる。
- 「〜たところだ」との区別「今、駅を出たところです」(時間:出たばかり)と「駅を出たところに公園があります」(場所)を並べ、あとに場所の言い方(ある・いる)が続くかどうかで見分けさせる。混乱するクラスでは時間の用法は深追いせず、「この課は場所」とだけ言う。
板書案
Vタ + ところに + ある/いる/見える
Vタ + ところで + 待つ/会う(☆)
改札を 出たところに コンビニが あります。
〔図〕改札 ──→ ●(点を打つ)=出たところ
〔赤〕あとに場所の動詞(ある・いる)→ 場所 〔青〕「今〜たところです」→ 時間
場面と発話(自作)
- 初めて家に来る友だちに、駅からの道を電話で説明する。改札を出たところにコンビニがあるから、そこを右に曲がって。
- 作文で、自分の町のお気に入りの場所を描写する。坂を上ったところに小さな公園があり、ベンチからは町全体が見える。
- 後輩と待ち合わせをする。場所を決めて伝える。明日は、図書館の階段を上がったところで待っていてね。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
学校のまわりの簡単な地図を配り、ペアで「〜を出たところに何がありますか」「〜を曲がったところで何をしますか」と聞き合わせる。本文で筆者の歩いた道順を地図に描く活動と重ねると、精読にもなる。
- 口頭黒板の地図の上で教師が指を動かし、場所と動きの語をキューにする(「改札・出る」「信号・渡る」「階段・上がる」「角・曲がる」)。学習者は「改札を出たところにコンビニがあります」と全体、個人で言う。続けて「待つ・会う・写真を撮る」のカードを足し、「階段を上がったところで待つ」の「で」の形(☆)に言い換える。
- ペア同じ町の地図を2種類配る。Aの地図には店の名前が書いてあり、Bの地図では空欄になっている。Bは「信号を渡ったところに何がありますか」と聞いて書き込み、全部埋まったら別の地図で役を交替する。
- 産出「待ち合わせメッセージ」。学校の最寄り駅から自分の好きな店までの道順と待ち合わせ場所を、友だちに送るメッセージの形で書く(「〜たところに」「〜たところで」を両方入れる)。ペアの相手がそのメッセージだけを見て地図に道を引けるか試す。教師はタ形になっているか、動きを表す動詞に付いているかを見る。
つまずきと手当て
- 「出るところに」と辞書形で言う。辞書形だと「出る場所(出口そのもの)」や「出る直前」のように意味がずれるので、「出た先の場所」は「Vタところ」の形だと板書に残す
- 「〜たところに」を「〜したばかり」と読んでしまう。あとに「ある・いる・見える」が来ていれば場所だと見分けさせる
- 動きのない動詞に付けて「勉強したところに本がある」と言う。「出る・曲がる・渡る・上がる」のような動きの動詞に限ると示す
既習の文型との違い
- Vタところだ(=〜したばかり)(初級)「今、駅を出たところです」は時間の言い方で、動作が終わった直後を言います。「駅を出たところに公園がある」は場所の言い方で、あとに「ある・いる・見える」などが続きます。学習者が場所の文を「出たばかり」と読み違えたら、後ろの動詞を指して見分けさせます。
- Vタら(初級)「改札を出たら、右に曲がって」は手順を順に言う条件の形で、「改札を出たところにコンビニがある」は位置そのものを言う形です。道案内では「〜たら、〜たところに…がある」と組み合わせて使うことが多いので、両方を1つの説明の中で練習させると自然な道案内になります。
学習項目 4 「意志動詞・無意志動詞」の整理
意味・はたらき学習項目 4
動詞を2つに分けて整理する項目です。意志動詞は「行く・読む・話す」のように、するかしないかを自分で決められる動作の動詞です。無意志動詞は「ある・できる・見える・困る・(雨が)降る・(物が)落ちる」のように、自分の意志では決められないこと(状態・能力・自然の変化・感情)を表す動詞です。この区別は文型を使えるかどうかに直接関わります。意向形(〜よう)・「〜つもりだ」・命令形・「〜ないでください」・目的の「〜ために」は意志動詞にしか付かず(原因の「雨が降ったために」は別の使い方)、「〜ように」「〜てしまう(残念)」「〜てくる(変化)」は無意志動詞とよく一緒に使われます。
接続
(文型ではない)動詞そのものの分類。同じ動詞が文脈で両方になることもある(「忘れる」は普通は無意志だが「忘れよう」と言えば意志)
形
意志動詞:行く・読む・買う・話す・勉強する(意向形・つもり・命令形が作れる)無意志動詞:ある・できる・見える・聞こえる・困る・降る・落ちる・壊れる(意向形・つもり・命令形が作れない)可能形は無意志(「読める」は「読む」の意志を失う)
導入
- 「〜ようと思います」が言えるかで分ける動詞を10個ほどカードで出し(行く・雨が降る・分かる・買う・見える・困る・読む・できる・落ちる・話す)、「〜ようと思います」と言えるかを学生に試させる。言えるものと言えないものに2列で板書し、「自分で決められる動作か」が分かれ目だと説明する。既習の「つもり」「〜てください」、目的の「〜ために」も同じ列にしか付かないことを確かめる。
- 同じ動詞が両方になる例「忘れる」を出し、「鍵を忘れた」(無意志)と「嫌なことは忘れよう」(意志)を並べる。動詞そのものでなく、その場面で意志があるかどうかで決まることもある、と添える。
板書案
〔左列〕意志動詞:行く・読む・買う・話す・決める
〔右列〕無意志動詞:ある・分かる・できる・見える・(雨が)降る・困る
見分け方:「〜よう」「〜つもり」「〜てください」「〜ために(目的)」が付く? → 付く=意志
〔赤〕〜ために(目的)=意志動詞 〔青〕〜ように=無意志動詞・可能形
〔注〕可能形(読める・話せる)は無意志
場面と発話(自作)
- 作文で、来年の目標を書く。意志動詞は意向形・「つもり」が使える。来年は日本語能力試験のN2を受けようと思っている。
- 同じ作文で、自然の変化や自分の状態を書く。無意志動詞は「〜ように」で目標にする。難しい文章が読めるように、毎日新聞を読むつもりだ。
- アルバイト先で、財布を落とした同僚に声をかける。無意志の出来事は「〜てしまう」で残念な気持ちを添える。財布、落としちゃったんですか。駅に聞いてみましょう。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
本文と練習の動詞を抜き出して2列に分けさせ、意志動詞には「〜ようと思う」、無意志動詞には「〜ように」か「〜てしまった」で1文ずつ作らせる。分類で終わらせず、文型との結びつきまで練習する。
- 口頭教師が動詞カードを1枚ずつ出す(降る・買う・分かる・寝る・困る・聞こえる・決める・忘れる)。学習者は「左(意志)」「右(無意志)」と声と手で分け、次に個人で意志動詞なら「〜ようと思います」、無意志動詞なら「〜ように〜します」の文を言う。
- ペア「意志テスト」。Aが動詞を1つ言い、Bはその動詞で「〜てください」の文を作れるか試す。作れなければ2人で「〜ように」か「〜てしまった」を使った文に直す。10語ずつで役を交替する。
- 産出「目標カード」。来学期の目標を5つ書く。自分で決められること(意志動詞)は「〜ようと思う」「〜つもりだ」、結果や力(無意志動詞・可能形)は「〜ように、〜する」で書く。教師は、意向形や「つもり」が無意志動詞・可能形に付いていないかを見て直す。
つまずきと手当て
- 無意志動詞に意向形を付ける(「日本語が分かろうと思います」)。「分かるように」に直し、目的を言うとき「〜ように」は無意志、「〜ために」は意志、と対で板書する
- 可能形を意志動詞と思って「読めるつもりだ」と言う。可能形は無意志になると示し、「読むつもり」「読めるように」に直す
- 「困る・疲れる・驚く」を意志動詞と思う(学習者の母語では自分の動作に見えることがある)。「命令できるか」(「困れ」とは言えない)で確かめさせる
既習の文型との違い
- 〜ように(目的・初級)目的を言うとき、「〜ために」の前には意志動詞(試験を受けるために)、「〜ように」の前には無意志動詞や可能形(よく聞こえるように・読めるように)が来るのが基本です。どちらも初級で学んだ目的の言い方で、この課の整理がそのまま使い分けの理由になります。学習者の「*よく聞こえるために、前に座る」は、「聞こえるように」に直します。
- 自動詞と他動詞(初級)無意志動詞には自動詞が多いですが、同じ分け方ではありません。「行く・走る」は自動詞でも意志動詞で、「落とす・なくす」は他動詞でも「財布を落とした」のように意志のない出来事を言えます。自他の区別と意志の区別は別の軸だと、2本の線で板書します。
関連する文型
学習項目 5 Nらしい・Nらしさ・Nらしく
意味・はたらき学習項目 5
「Nらしい」は「いかにもNという感じがする」「Nの典型的な性質を持っている」という意味で、い形容詞と同じように活用します(春らしい天気・学生らしい服装・自分らしい生き方)。名詞の形「Nらしさ」はその性質そのもの、「Nらしく」は副詞の形です。「〜らしい」には別に、聞いたことや様子から判断する「〜らしい(どうも〜のようだ)」があり、形が同じなので、この課では「典型」の意味を中心に扱い、必要なら見分け方を添えます。
接続
N+らしい(い形容詞型:らしくない・らしかった・らしくて)/N+らしさ(名詞)/N+らしく(副詞・あとに動詞)/N1らしいN2
形
Nらしい N(春らしい天気)Nらしさ(自分らしさ・学生らしさ)Nらしく(Vする)(学生らしく勉強する)Nらしくない(彼らしくない失敗)
導入
- 「いかにも〜」から入る季節の写真(桜・雪・海)を見せ、「いかにも春という感じですね」と言ってから「春らしい天気」と板書する。「春らしい」は「春だ」と言っているのではなく「春の典型的な感じがする」ことだと説明し、「本当に春かどうかは関係ない」と添える。次に「学生らしい」「先生らしい」と人に広げ、「どんな人が学生らしい?」と学生に言わせる。
- 推量の「らしい」と形で区別する「田中さんは学生らしい」の1文を見せ、「典型」と「どうも学生のようだ」の2つに読めることを確かめる。見分けは文脈だが、「学生らしい服装」のように後ろに名詞があれば典型、「〜だそうだ」と言い換えられれば推量、と目安を示す。
板書案
N + らしい(い形容詞と同じ活用:らしくない・らしかった)
春らしい 天気/学生らしく 話す/自分らしさ
〔赤〕典型:N+らしい(いかにも) 〔青〕推量:普通形+らしい(どうも〜ようだ)
あの人らしくない 失敗(「らしくない」も よく使う)
場面と発話(自作)
- 作文で、自分の町の秋の様子を描写する。11月に入ると、木の葉が色づき、いかにも秋らしい景色になる。
- 面接で、自分の強みを聞かれた。周りに合わせすぎず、自分らしく働けるところが強みです。
- いつも元気な同僚が今日は静かだ。別の同僚に話す。今日の山田さん、全然山田さんらしくないね。何かあったのかな。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
「学生・先生・日本・春・自分」の5語で、「〜らしい N」「〜らしく V」「〜らしさ」の3つの形をそれぞれ1つずつ作らせる。「自分らしさとは何か」を短く言わせると、作文のテーマにもつながる。
- 口頭写真や語をキューにする(桜の写真→春、名刺とスーツ→会社員、玄関にそろえた靴→日本、いつも笑顔の同僚→山田さん)。学習者が「春らしい天気ですね」と全体、個人で言う。続けて同じ語で「〜らしくない」「〜らしく V」「〜らしさ」に形を替えて言わせる。
- ペア「らしい・らしくないインタビュー」。「あなたの国で『先生らしい先生』はどんな人ですか」「『お母さんらしい』はどんな人ですか」と聞き合い、相手の国との違いを1つメモする。3つの人を聞いたら役を交替する。
- 産出「わたしらしさスピーチ」。1分で「自分らしさ」か「自分の町らしさ」について話し、「〜らしい」「〜らしく」「〜らしさ」を全部使う。教師は名詞の後ろに付けているか、「〜らしいな」のようにな形容詞の形にしていないかを見る。
つまずきと手当て
- な形容詞のように「学生らしいな人」と活用する。い形容詞型だと板書に残す(らしくない・らしかった)
- 推量の「らしい」と区別がつかず、「雨が降るらしい天気」のように動詞に付ける。「典型」の意味は名詞にしか付かないと言う
- 「〜っぽい」と同じと思う(「子どもっぽい」は否定的・「子どもらしい」はよい意味になりやすい)。評価の向きが違うことを例で示す
既習の文型との違い
- 〜らしい(第6課)第6課の「〜らしい」は、聞いた話や様子から判断する推量で、普通形に付きます(雨が降るらしい・あの店は休みらしい)。この課の「Nらしい」は名詞に付いて典型の性質を言います。「あの人は学生らしい」は両方に読めるので、後ろに名詞があるか、「〜だそうだ」に言い換えられるかで見分けさせます。
- Nのような・Nみたいな(初級)「春のような天気」は、まだ冬なのに春にたとえて言うときに使いやすく、「春らしい天気」は春に春の典型の天気が来たときに使いやすい、という傾向があります。「男らしい」が男性の典型を言うのに対し、「男のような」は男性でない人をたとえる言い方になるのも同じ違いです。
- 〜っぽい「子どもっぽい」は年に合わない幼さを批判するときに使うことが多く、「子どもらしい」は子どもとしての自然なよさを言うことが多いです。「っぽい」は話し言葉寄りで、「白っぽい」「忘れっぽい」のように色や傾向にも付きます。評価の向きを例文で並べて見せます。
関連する文型
学習項目 6 〜げ(=そう(様態))
意味・はたらき学習項目 6
人の気持ちや物の様子が、外から見てそう感じられることを言う形です。「寂しげ」「楽しげ」「不安げ」「得意げ」「満足げ」のように気持ちを表す語のほか、「涼しげ」「怪しげ」のように様子を表す語にも付き、な形容詞として活用します(寂しげな顔・寂しげに笑う・寂しげだ)。「〜そうだ(様態)」とよく似ていますが、「げ」は気持ちや様子を表す一部の語にしか付かず使える語が限られ、やや書き言葉的で文学的な感じがします。人を観察して言う形なので、目上の人の様子に使うと失礼になります。
接続
い形容詞の語幹+げ(寂し+げ・楽し+げ)/な形容詞の語幹+げ(不安+げ・得意+げ)/一部は「Vマス+たげ」(言いたげ)。な形容詞型で活用:〜げなN・〜げにV・〜げだ
形
〜げな N(不安げな顔)〜げに V(得意げに話す)〜げだ(楽しげだ)言いたげ・意味ありげ・自信ありげ(決まった言い方)
導入
- 表情の絵で「そう」から「げ」へ寂しい顔・楽しい顔・得意な顔の絵を見せ、既習の「寂しそうな顔」を言わせてから「寂しげな顔」と板書する。意味はほぼ同じで、「げ」は小説や描写の文で使う書き言葉寄りの形だと説明する。使える語が限られるので、この課で使う語(寂しげ・楽しげ・不安げ・得意げ・満足げ)をまとめて見せ、「おいしげ」のようには言えないことも添える。
- 誰の様子に使えるか「部長は得意げに話した」と板書し、学生に「これを部長の前で言えますか」と聞く。外から観察して評価する言い方なので、目上の人には使わない、と確かめる。本文や小説の中の人物、友だち、子どもの描写に限ると言う。
板書案
い形の語幹/な形の語幹 + げ(な形容詞と同じ活用)
寂しげな 顔/得意げに 話す/不安げだ
〔赤〕〜げ=書く文・描写 〔青〕〜そう=会話でも使う
〔注〕目上の人の様子には使わない
場面と発話(自作)
- 作文で、公園のベンチにいる老人の様子を描写する。老人は、池のほうを見ながら、寂しげにパンを食べていた。
- 日記に、新しいゲームを買った弟の様子を書く。弟は、最新のゲームを得意げに見せてきた。
- 小説風の短い作文で、初めて日本に来た日の自分を書く。空港で、私は不安げに案内の看板を見上げていた。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
絵や短い状況(試験に受かった友だち・財布をなくした人・初めての発表)を見せ、「〜げに V」で1文ずつ描写させる。「〜そうに」でも言わせて、どちらも正しいが「げ」は書く文で、と確かめる。
- 口頭表情の絵カードを出す(寂しい顔・楽しそうに遊ぶ子ども・不安な顔・自慢する顔・満足した顔)。学習者はまず既習の「〜そうな顔」で言い、次に「〜げな顔」に言い換える。続けて「笑う・話す・見る」の動詞カードを足し、「得意げに話す」のように「〜げに V」の形を全体、個人で言う。
- ペア「表情ジェスチャー当て」。Aは気持ちのカード(寂しい・不安・得意・満足)を1枚引き、顔と動きだけで演じる。Bはそれを見て「〜げに〜している」で描写する。当たったら役を交替する。
- 産出「人物スケッチ」。駅や公園で見かけそうな人を一人想像し(写真を使ってもよい)、その様子を3〜4文の描写文に書く。「〜げに」「〜げな」を1つずつと、学習項目5の「〜らしい」を1つ入れる。教師は「げ」の付く語(この課で扱った語)に付けているか、な形容詞の形で活用しているかを見る。
つまずきと手当て
- 「おいしげ」「高げ」のように、「げ」の付かない語に付ける。「げ」は気持ちや様子を表す一部の語に付き、使える語は限られると、使える語を一覧で示す
- い形容詞型で活用して「寂しげい」「寂しげく」と言う。な形容詞型(げな・げに・げだ)だと板書に残す
- 目上の人の様子を「先生は満足げでした」と本人の前で言う。描写の文や、その場にいない人の話に限ると言う
既習の文型との違い
- 〜そうだ(様態)(初級)「寂しそうな顔」と「寂しげな顔」はほぼ同じ意味ですが、「そう」は会話でも使え、「おいしそう」「雨が降りそう」のように味や天気、動詞にも付きます。「げ」は気持ちや様子を表す一部の語にしか付かず、小説や描写の文で使う硬めの形です。会話で「楽しげだね」と言うと、やや気取って聞こえることがあります。
- Nらしい・Nらしさ・Nらしく(第5課)どちらも見た印象を言う形ですが、「Nらしい」は名詞の典型の性質を言い、「〜げ」は人の気持ちが顔や態度に表れた様子を言います。「学生らしい服装」と「得意げな学生」を並べると、性質と表情の違いが見えます。
- 〜がる(初級)「寂しがる」も他人の気持ちを外から言う形ですが、動詞で、その人の言葉や行動に表れていることを言います(子どもが寂しがっている)。「〜げ」は形容詞のまま様子を描写します。どちらも、他人の気持ちを本人のように言い切らない形だという点は共通です。
関連する文型
語彙の扱い
この課の新出語は 117 語(本文を読むための語 30・練習などの語 87)。1語ずつの意味・いっしょに使う助詞と連語・例文は語彙のページにあります。
新出語は扉・本文・ことばを確かめよう・学習項目・練習・チェックシート・作文・プラスアルファの8つに分かれ、練習・作文・プラスアルファの語が多い課です。本文の語は連語の形(日を浴びる・空気に包まれる・たたずまいを漂わせる・息抜きをする)で練習し、「半ば」「幾分」「何だか」のような副詞は文のどこに置くかを見せます。作文の語(近況・日増しに・色づく・くれぐれも)は手紙の決まり文句の材料に、プラスアルファの語(正面・向かい・斜め・面する・接する)は学習項目3の場所の言い方と合わせて、地図を使って練習すると定着しやすいです。
第5課の語彙リスト(117語)新出語の意味・いっしょに使う助詞と連語・例文(自作)を五十音順に
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本文の扱い
筆者が自分の住む町を歩きながら、目に入る景色(住宅街・商店街・池沿いの小道・落ち葉)と、そこで感じる気分(穏やか・息抜き)を描く、エッセイ風の文章と見られます。本文の具体的な内容はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。大意の段階では「筆者はどこを通って何を見たか」を段落ごとに一言で言わせ、精読では筆者の歩いた道順を簡単な地図に描かせて、「Vタところに」が指す場所と「〜つつある」が言っている変化を地図の上で確かめると、学習項目1・3と本文理解が一度に進みます。気分を表す副詞(半ば・幾分・何だか)は、筆者がどのくらいそう感じているかを問う材料にできます。
宿題と次のコマ
チェックシートを宿題にして次のコマの最初に答え合わせ。漢字練習は「ルビなし本文」を声に出して読めるところまで。作文は、国の家族や友だちに季節と近況を伝える手紙を1通。書き出しに季節の描写(「〜らしい」「日増しに」)、本文に町の変化(「〜つつある」)、結びに「くれぐれも」を入れる、と型を示しておくと、課の文型が自然に入る。
よくある質問
中級を学ぼう 第5課「私の町」は何コマで終わりますか?
文型は6つと少なめなので、90分×3コマが目安です。1コマ目で扉・本文の大意・ことば、2コマ目で学習項目1〜4、3コマ目で学習項目5・6と精読・練習を扱い、作文は宿題にすると収まります。作文を教室で書かせるなら、もう1コマ足してください。
「〜つつある」と「〜ている」の違いはどう説明すればいいですか?
「〜ている」は変化が終わったあとの状態(もう閉まっている)、「〜つつある」は変化の途中(閉まる途中)だと、矢印の図で見せるのが分かりやすいです。あわせて「つつある」は書き言葉で、会話では「だんだん〜てきている」と言う、と文体の違いも伝えます。付けられるのは「増える・減る・変わる・なる」のような変化の動詞だと押さえておくと、誤用が減ります。
「Vタところに」を学習者が「〜したばかり」の意味と混同します。どう見分けさせますか?
後ろに続く言葉を見させます。「〜たところに/で」のあとに「ある・いる・見える・待つ」のような場所や位置の動詞が来れば場所、「〜たところです」で文が終われば時間(したばかり)です。この課では場所の用法だけを深く扱い、時間の用法は見分けの確認にとどめると混乱しにくくなります。
意志動詞・無意志動詞の整理は、どの文型と結びつけて教えるといいですか?
意向形(〜よう)・「〜つもりだ」・命令形・「〜てください」・目的の「〜ために」が付くかどうかで分けさせ、無意志動詞と可能形は「〜ように」と組む、と既習の文型に結びつけるのが効果的です。分類だけで終わらせず、目標を書く作文などで実際に使い分けさせると定着します。「忘れる」のように場面で両方になる動詞があることも添えます。
「Nらしい」と推量の「〜らしい」は、この課で区別して教えるべきですか?
この課は名詞に付く「典型」の「Nらしい」が中心なので、推量の「〜らしい」(第6課)は見分け方の確認だけで十分です。後ろに名詞が来る(春らしい天気)なら典型、「〜だそうだ」に言い換えられるなら推量、という目安を示しておくと、第6課で推量を扱うときにつながります。
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。