中級を学ぼう 中級前期 第2課「いい数字・悪い数字」の教案
『中級を学ぼう 日本語の文型と表現56 中級前期 第2版』
国や文化によって「いい数字」「悪い数字」が違うという読み物の課で、学生の国の話がそのまま教材になります。文型は「〜というN」「〜ほど〜はない」「〜ほど」「Nからすると」と、疑問文を受ける「〜より」。自分の国の数字の話を「〜というN」「Nからすると」で言わせると、文型と内容が一度に動きます。
このページについて教科書の本文・例文・設問は載せていません。例文と場面はすべて自作です。項目番号は教科書の「学習項目」の番号に合わせています。
学習項目6時間90分×2コマ語彙100語
この課のねらい(Can-do)
- 「〜というN」で、言葉や習慣の名前と中身を説明できる
- 「〜ほど〜はない」で最上級の言い方が、「〜ほど」で程度の比喩ができる
- 「Nからすると」で、立場を変えて意見を言える
- 大きな数・割合・分数を読める・書ける
進め方と時間配分
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
| 扉(話しましょう) | 15分 | 自分の国のいい数字・悪い数字と、その理由を出し合う。黒板に「国・数字・理由」の表を作って残す(学習項目1・4の材料) |
| 本文の大意 | 20分 | 段落ごとに「どの国の、どの数字の話か」を一言で。学生の国と同じ・違うを聞く |
| ことばを確かめよう | 15分 | 語彙リストの読みと意味。数字に関する語(縁起・迷信・割合)は学習項目6につなぐ |
| 学習項目 1〜3 | 40分 | 1コマ目の後半。本文の文に戻りながら。1(〜というN)と4(Nからすると)は扉の表を使って学生の国の話で練習する。2(〜ほど〜はない)と3(〜ほど)は続けて導入し、終わりが「はない」かどうかで見分けさせる |
| 学習項目 4・5 | 40分 | 2コマ目の初め。4(Nからすると)は扉の表で立場を入れ替えて言わせる(20分)。5(〜かより、〜)は名詞の比較を問いの比較に替える形で導入し、意見文の結論の言い方として練習する(20分) |
| 学習項目 6(数字) | 25分 | 大きな数・小数・分数・割合の読み方と書き方。統計の文を読んで数字を言わせる |
| 内容を確かめよう・練習・チェックシート・作文・漢字 | 25分 | 作文は「私の国の数字」で、「〜というN」「Nからすると」を使う。チェックシートと作文は宿題に回してよい |
学習項目 1 〜というN
意味・はたらき学習項目 1・☆〜っていうN
名前・内容・定義を名詞にかぶせる言い方です。「『七福神』という言葉」のように名前を示すときと、「4は死を思わせるという考え」のように内容や考えの中身を示すときがあります。話し言葉では「〜っていうN」「〜ってN」になることが多く、本文のような書き言葉では「〜という」です。「考え・話・うわさ・意見」のように言葉や思考を表す名詞の前では「という」が入るのがふつうで、とくに中身が「〜だ」で終わる文や引用のときは省けません(「来月引っ越す話」のように省けることもあります)。「習慣・事件」のような名詞では「という」がなくてもよく言えます。文法用語では、名詞の中身を説明する連体修飾(内容を表す修飾)の形として扱われます。
接続
N/普通形+という+N(話し言葉は「〜っていう N」「〜って N」)
形
N というN(名前)普通形 というN(内容・考え)〜っていうN(話し言葉)
導入
- 扉の表から扉で出た「国・数字・理由」の表を指して、教師が「タイでは9がいい数字だという話を聞きました」のように学生の話を「〜という話/考え」で言い直す。名前のほうは、本文に出る言葉を「『〜』という言葉を知っていますか」と聞いて示す。
- 書き言葉と話し言葉を並べる同じ文を「〜っていう話」と言い直して、話すときの形を見せる。第1課の「って(=は)」とつなげて、「って」は話し言葉の目印だと再確認する。
板書案
N/普通形 + という + N
「大安」という言葉 〔青〕名前
4は死を思わせるという考え 〔青〕中身
〔赤〕話す → 〜っていうN/〜ってN
〔赤〕考え・話・うわさ の前は「という」を入れる(中身が「〜だ」で終わるときは省けない)
場面と発話(自作)
- 日本人の友だちに、自分の国の習慣を説明する。私の国には、新年に長い麺を食べるという習慣があります。
- 授業で聞いた言葉を、あとで先輩に確かめる。「大安」っていう言葉、結婚式と関係があるんですよね。
- 作文で、本文の内容を引いて自分の意見を書く。4という数字が「死」を思わせるという考えは、中国語を使う国にもある。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
学生の国の習慣を1つずつ「〜という習慣/考え/言葉」で言わせ、教師が黒板に並べる。そのあと同じ文を「〜っていう」で隣の人に話させて、書き言葉と話し言葉の両方を体に入れる。
- 口頭教師が語カード(大安・お年玉・仏滅・ラッキーセブン)を見せ、全体で「『大安』という言葉」と言う。続けて習慣カード(新年に長い麺を食べる/お祝いのお金を赤い袋に入れる/結婚式で割り切れる数を避ける)を出し、「〜という習慣があります」と全体→個人で言わせる。最後に同じ文を「〜っていう」で言い直させる。
- ペアAは自分の国の言葉を1つ紙に書いて見せ、Bが「〜っていう言葉、どういう意味?」と聞く。Aは「〜という意味で、〜のときに使います」と説明する。Bはもう一つ質問をしてから交替。2回ずつ。
- 産出「わたしの国の数字図鑑」: 自分の国のいい数字か悪い数字を1つ選び、カードに「〜という数字」「〜という考え」を使って3文で書き、グループで発表する。教師は、考え・話の前の「という」が抜けていないか、書いた文に「って」が混ざっていないかを見て直す。
つまずきと手当て
- 「〜のN」で足りるところに「という」を付けて重くなる(「東京という町の人」)。名前を紹介する初出のときに使うと言う
- 引用の「〜と言う」と書き分けられない。「という」はひらがな、人が言う動作のときは「言う」と板書する
- 話し言葉の「って」を作文に書く(第1課からの続き)
既習の文型との違い
- カタカナ語(Nって何ですか/Nのことです)(第1課)第1課の「Nって何ですか」は、知らない言葉を話題に出して意味を尋ねる文です。「〜というN」は後ろの名詞にかかって名詞のまとまりを作ります。学習者が二つを混ぜると「*大安という何ですか」のように、「という」の後ろに名詞がない文になります。
- 〜と言う(引用・初級)「先生が〜と言った」は人が言う動作で、漢字の「言う」です。「〜という話」は後ろに名詞があり、ひらがなで書きます。後ろに名詞があるかどうかで見分けさせます。
- 名詞修飾(初級)「4を避ける習慣」「4を避けるという習慣」はどちらも言えます。「考え・話・うわさ」の前も「来月引っ越す話」のように「という」なしで言えることはありますが、入れるのがふつうで、中身が「〜だ」で終わる文や引用のときは省けません(*4は不吉だ考え → 4は不吉だという考え)。初級の名詞修飾をそのまま広げると抜けやすいので、名詞の種類で分けて見せます。
関連する文型
学習項目 2 Vること/N ほど〜はない・いない
意味・はたらき学習項目 2
「〜がいちばん〜だ」を、否定の形で強く言う言い方です。「母の料理ほどおいしいものはない」は「母の料理がいちばんおいしい」と同じ意味で、話し手の気持ちが強く出ます。人には「いない」、物や事柄には「ない」を使います。初級の「AはBほど〜ない」(2つの比較)と形が似ていますが、こちらは後ろに「もの・こと・人+はない」が来て、ほかのすべてと比べてNが一番だと言います。事実を淡々と言うなら「いちばん」、感動や強い評価を込めるなら「ほど〜はない」が合う傾向があり、話し言葉では「Nぐらい〜はない」もほぼ同じ意味で使われます。
接続
N/Vること+ほど+形容詞+N/もの/人+はない・いない
形
N ほど 〜 ものはないVること ほど 〜 ことはないN ほど 〜 人はいない
導入
- 「いちばん」の文を言い換える学生に「いちばん好きな食べ物は?」と聞き、「〜がいちばん好きだ」を板書してから、同じ内容を「〜ほど好きなものはない」に書き換える。意味が同じで気持ちが強いことを、声の調子で見せる。
板書案
N/Vること + ほど + 〜 + もの/こと/人 + は ない・いない
〔青〕〜がいちばん〜 → 〜ほど〜はない
旅行ほど楽しいものはない。
家族と話すことほどほっとすることはない。
〔赤〕人 → いない 物・事 → ない
(比べる)AはBほど〜ない ⇔ (いちばん)Bほど〜Nはない
場面と発話(自作)
- 国の料理の話になった。自分の母の料理を自慢する。母の作るカレーほどおいしいものはない。
- 作文で、日本に来てよかったことを書く。自分の言葉で話が通じたときほど、うれしいことはない。
- 親切にしてくれた先輩のことを後輩に話す。あの先輩ほど親切な人はいない。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
「いちばん〜」の文を5つ言わせて、全部「〜ほど〜はない」に直す。人と物で「いない/ない」を使い分けることを、直すたびに確かめる。
- 口頭教師が「いちばん」カード(いちばんおいしい食べ物/いちばん大変だったこと/いちばん尊敬する人/いちばん好きな季節)を出し、学習者はまず「〜がいちばん〜」と言い、全体で「〜ほど〜はない」に言い換える。人のカードで「いない」に変わることを、そのたびに声に出して確かめる。
- ペアAが話題カード(ふるさとの料理・場所・季節・先生)を引いて「〜ほど〜ものはない」と言い、Bが「どうして?」と理由を聞く。Aは理由を1つ答える。Bは最後に「AはBほど〜ない」の比較の文で、自分の考えを一つ返す。交替して3枚ずつ。
- 産出「わたしのナンバーワン紹介」: 自分にとっての一番(食べ物・場所・人のどれか)を1つ選び、「〜ほど〜はない」で始めて理由を2文続ける30秒のスピーチ。教師は「ない/いない」、肯定の「はある」、後ろの名詞の抜け(*母の料理ほどおいしいはない)を聞いて直す。
つまずきと手当て
- 「〜ほど〜はある」と肯定で言う。否定で最上級になる形だと板書に残す
- 学習項目3の「〜ほど」(程度)と同じだと思う。「〜はない」で終わるかどうかで見分けさせる
- 人に「ない」を使う(「先輩ほど親切な人はない」)
既習の文型との違い
- AはBほど〜ない(初級)初級の比較は2つを比べて、AがBに及ばないと言います(今年の夏は去年ほど暑くない)。この課の形は、「ほど」の前のNがほかのどれよりも上だと言います。「この店の料理は母の料理ほどおいしくない」はほめたことにならないので、両方を並べて見せます。
- Vる/Vない ほど(第2課)同じ課の学習項目3は程度のたとえで、文は形容詞などで終わります(泣きたいほど悔しい)。学習項目2は「もの・こと・人+はない」で終わる最上級です。終わり方で見分けさせます。
関連する文型
学習項目 3 Vる/Vない ほど
意味・はたらき学習項目 3・☆ぐらい・くらい
動作や状態の程度を、たとえや具体的な例で表す言い方です。「泣きたいほど悔しい」は、悔しさの程度を「泣きたい」というたとえで示しています。話し言葉では「ぐらい・くらい」も使いますが、「死ぬほど」のような極端なたとえには「ほど」を使います。「〜ほどだ」の形で文を終えることもあります(寒くて、手が動かないほどだった)。「練習すればするほど上手になる」の「〜ば〜ほど」は、一方が増えるともう一方も増える比例の言い方で、この項目とは別の使い方です。
接続
Vる/Vない/い形+ほど(話し言葉では「ぐらい・くらい」も)
形
Vる ほど(泣きたいほど)Vない ほど(数えきれないほど)〜くらい(話し言葉・極端なたとえには使わない)
導入
- 程度を聞いてたとえを引き出す「どのくらい暑かったですか」と聞き、「とても」で止まった学生に「たとえると?」と重ねる。「外に出たくない」が出たら「外に出たくないほど暑かった」と板書し、程度をたとえで言う形だと説明する。
- 「ぐらい」との並べ方同じ文を「〜くらい暑かった」とも言わせ、話すときはどちらでもよいが「死ぬほど」のような大げさなたとえは「ほど」と言う。
板書案
V辞書形/Vない形/い形 + ほど + 〜
泣きたいほど 悔しい。
数えきれないほど 星が見えた。
〔赤〕とても → たとえ・例で程度を見せる
〔青〕話す:〜ぐらい・くらい(大げさなたとえは「ほど」)
場面と発話(自作)
- 週末の混んだ店の様子を友だちに話す。店の前に、道まで並ぶほど人がいた。
- 日本に来た最初の冬を作文に書く。手が動かなくなるほど寒い朝が続いた。
- 試験の結果を友だちに報告する。信じられないくらいよくできた。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
「とても〜」の文を「〜ほど〜」に直させ、たとえを自分で考えさせる。たとえが思いつかない学生には「どうなった?」と結果を聞くと出やすい。
- 口頭教師が「とても」の文カード(とても眠い/とても忙しい/とても辛いカレー/とても混んでいる電車)を出し、全体で「とても」を「〜ほど」に替える。たとえが出ないときは、教師が表情や身ぶり(目が閉じそう・汗をふく・体が動かせない)でヒントを出す。
- ペア「どのくらい?インタビュー」: Aが「昨日の宿題、どのくらい大変だった?」のように程度を聞き、Bが「〜ほど大変だった」と答える。Aは同じ内容を「〜くらい」で言い直して確かめる。質問を3つずつして交替。
- 産出「おおげさ日記」: 今週あった出来事を3つ、「〜ほど」のたとえを付けて書き、グループで読み上げて一番おおげさな文を選ぶ。教師は「ほど」の前が辞書形・ない形・い形になっているか(*泣きましたほど)、たとえが程度を表しているかを見る。
つまずきと手当て
- この項目は動詞・形容詞に付く「ほど」で練習する。「山ほど」のような名詞の形は別に扱い、混ぜない
- 学習項目2の「〜ほど〜はない」と混同する。終わりが否定の最上級かどうかで区別
- 「ぐらい」を極端なたとえに使う(「死ぬぐらい」)。話し言葉で軽い程度のときだけと言う
既習の文型との違い
- Vること/N ほど〜はない・いない(第2課)学習項目2は「〜はない」で終わって一番だと言い、この項目は程度をたとえで示します。「泣きたいほど悔しいことはない」のように二つが重なることもあるので、どこまでが程度でどこからが最上級かを分けて見せると整理しやすくなります。
- 〜ぐらい・くらい(第2課・☆)程度のたとえでは「ほど」とほぼ同じですが、話し言葉に多い言い方です。「それぐらい自分でできる」のように、軽く見る気持ちを込める使い方は「ぐらい」にあって「ほど」にはありません。
- 〜ば〜ほど(比例)「考えれば考えるほど分からなくなる」は、一方が進むともう一方も進むという比例の言い方です。形に「ほど」があるので混ぜやすく、この課の「ほど」はたとえで程度を言うだけだと区別させます。
関連する文型
学習項目 4 Nからすると
意味・はたらき学習項目 4
「Nの立場から見ると」「Nを基準に判断すると」という意味です。人や立場(学生・親・外国人)を前に置いて、その人の見方で意見を言うときと、根拠(話し方・様子)を前に置いて判断を言うときがあります。後ろには「〜だ」「〜と思う」「〜だろう」のような判断や意見が来やすく、根拠の使い方では「〜だろう」「〜らしい」「〜ようだ」と結びつきやすいです。「Nにとって」は後ろに「大切だ・難しい」のような評価が来やすい点で使い分けます。
接続
N+からすると(「からすれば」「からしたら」も同じ)
形
〔立場〕からすると、〜(学生からすると)〔根拠〕からすると、〜(話し方からすると)
導入
- 扉の表で立場を変える扉の「国・数字・理由」の表から、「日本人からすると4は悪い数字ですが、〜人からすると?」と聞く。立場を変えると判断が変わることを、学生の国で言わせる。
- 根拠の使い方「あの人の話し方からすると、関西の人だろう」のように、見た・聞いたことを根拠にする使い方を1つだけ示し、第1課の「だろう」とつなげる。
板書案
N + からすると(からすれば・からしたら)
〔青〕立場 日本人からすると、4は縁起が悪い数字だ。
〔青〕根拠 この字からすると、子どもが書いたのだろう。
〔赤〕後ろ:判断・意見(〜だ・〜と思う・〜だろう)
場面と発話(自作)
- 日本人の友だちが「8時集合は早い」と言った。自分は朝型。私からすると、8時はちょうどいい時間だよ。
- 作文で、自分の国の数字について書く。タイ人からすると、9は幸運を呼ぶ数字だ。
- 初めて会った人の年齢を推測して友だちに言う。話し方からすると、学生じゃなくて社会人だと思う。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
「〜人からすると」で、本文の数字の話を自分の国に置き換えて言わせる。そのあと「親からすると」「子どもからすると」のように立場を変えて、同じ出来事を2つの見方で言わせる。
- 口頭教師が立場カード(親・子ども・店の人・客・日本人・留学生)と話題カード(夜のアルバイト・値上げ・4号室)を組み合わせて出し、全体で「親からすると、夜のアルバイトは心配だ」のように言う。次に根拠カード(足あと・話し方・荷物の量)を出し、「〜からすると、〜だろう」で推測を言わせる。
- ペア「立場チェンジ」: 同じ出来事(試験の日が1週間早くなった/駅前に大きな店ができた)を、Aは学生や住民の立場、Bは先生や店の立場で「〜からすると」で一言ずつ言う。立場を入れ替えてもう一度。
- 産出「数字の意見文」: 自分の国の縁起のいい数字か悪い数字について、自分の国の人の立場と日本人の立場を1文ずつ「〜からすると」で書き、最後に自分の意見を1文足す。教師は後ろが判断・意見で終わっているか、立場と根拠のどちらの使い方かが読み手に分かるかを見る。
つまずきと手当て
- 「Nにとって」と同じだと思う。「にとって」は評価(大切だ・難しい)が続き、「からすると」は判断・意見が続くと例で分ける
- 「からして」と混同する。「からして」は「社長からして遅刻する」のように一つの例を挙げて「ほかも当然そうだ」と言う使い方があり、根拠の意味でも使うので紛らわしい。この課では「からすると」だけを使わせる
- 「私からすると」を多用して意見文が全部これになる。作文では1回だけと言う
既習の文型との違い
- Nにとって(第6課)「私にとって家族は大切だ」のように、「にとって」の後ろには評価が来やすく、「からすると」の後ろには判断や意見が来やすいです。「親からすると、夜のアルバイトはやめたほうがいい」「話し方からすると、関西の人だろう」は自然ですが、「*親にとって、夜のアルバイトはやめたほうがいい」「*話し方にとって、関西の人だろう」のように、助言や推測で終わる文に「にとって」を使うと不自然になります。後ろの述語を見て選ばせます。
- 〜によると(初級)「天気予報によると」は情報の出どころを示し、後ろに伝聞の「〜そうだ」が来ます。「からすると」は話し手自身が判断するときの根拠や立場です。だれが判断しているかで分けさせます。
関連する文型
学習項目 5 〔疑問語疑問文〕より、〜
意味・はたらき学習項目 5
「何を食べるか」「どこで買うか」のような疑問文をひとまとまりにして、「〜より、〜のほうが大切だ」のように比べる言い方です。比べるものが物ではなく「どうするか」という問いになるのが特徴で、意見文でよく使います。疑問文を名詞のように文の中に入れた形は、文法用語では埋め込まれた疑問文(間接疑問)と呼ばれます。名詞やな形容詞で終わる問いは「だ」を付けずに「か」で受け(どんな人か・どこが静かか)、後半には「〜のほうが大切だ」「〜で決まる」のように何を重く見るかを言う文が続きます。
接続
〔疑問語+普通形+か〕より、〜(「〜かどうか」より、の形もある)
形
何を〜かより、〜どこで〜かより、〜〜かどうかより、〜
導入
- 物の比較から問いの比較へ「値段より味のほうが大切だ」を板書してから、「値段」を「いくらか」に、「味」を「おいしいかどうか」に替えて、「いくらかより、おいしいかどうかのほうが大切だ」と書く。比べるものが問いになっただけ、と説明する。
板書案
〔疑問語〕+ 普通形 + か + より、〜のほうが 大切だ
値段 より 味 → いくらか より おいしいかどうか
何を食べるかより、だれと食べるかのほうが大切だ。
〔赤〕「か」を落とさない 〔青〕名詞・な形は「だ」を取る(どんな人か)
場面と発話(自作)
- 作文で、数字の縁起について自分の意見を書く。どの数字を選ぶかより、どう使うかのほうが大切だと思う。
- 旅行の計画で、友だちと意見が分かれた。どこへ行くかより、誰と行くかが問題だよ。
- 就職の相談で、先輩に言われたことを伝える。給料がいくらかより、何をするかで決めたほうがいい、と言われた。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
「AよりB」の文を言わせてから、AとBを「〜か」の問いに替えさせる。替えにくい学生には「どんな問い?」とヒントを出す。
- 口頭教師が「AよりB」の文(値段より味/場所より人/時間より中身)を言い、全体でAとBを疑問語の問いに替える。キューは「場所」→どこでするか、「人」→だれとするか、「時間」→いつ始めるか、「量」→どのくらいするか。替えられたら文全体を言わせる。
- ペア「どっちが大事?」: 話題カード(旅行・部屋探し・アルバイト選び・プレゼント)を引き、Aが「〜かより、〜かのほうが大事だと思う」と言い、Bが賛成か反対かを、同じ形で別の問いを使って返す。交替して3枚ずつ。
- 産出「縁起の数字ミニ討論」: 「部屋や電話番号の数字を気にするか」について、2グループが「〜かより、〜か」を使った主張と理由を準備して1分ずつ述べる。教師は「か」の抜け、「〜かどうか」の「どうか」の抜け、名詞の問いに付いた余分な「だ」を見て直す。
つまずきと手当て
- 「か」を落とす(「どこへ行くより」)。問いの形には「か」が要ると板書に残す
- 比べたあとの文が「大切だ・問題だ・決まる」以外に広がらない。意見文の結論で使う形だと割り切ってよい
- 「〜かどうか」の「どうか」が抜ける
既習の文型との違い
- AよりBのほうが(初級)初級の比較は名詞どうしを比べます。この項目は、比べるものが「どうするか」という問いになっただけで、後半の「〜のほうが」の形は同じです。名詞の比較から問いの比較へ一段ずつ替えさせると混乱しません。
- より〜(第1課)第1課の「より」は「よりよい」「より多く」のように形容詞の前に置く副詞で、比べる相手を言いません。この項目の「より」は比べる相手を示す助詞で、前に問いが来ます。同じ字でも働きが違うことを、前に何があるかで見分けさせます。
- 〜かどうか(初級)疑問語のない問い(はい・いいえで答える問い)を文に入れるときは「〜かどうか」になります(行くかどうか)。疑問語がある問いは「か」だけです(どこへ行くか)。「*どこへ行くかどうか」のように両方を重ねる誤りに気をつけます。
関連する文型
学習項目 6 「数字」について読む・書く
意味・はたらき学習項目 6
大きな数(万・億)、小数、分数、割合(パーセント・割)、概数(約・およそ・〜前後)の読み方と書き方を扱う項目です。文型ではありませんが、本文やグラフを読むときに数字で止まる学生が多いので、独立して時間を取る価値があります。日本語は万・億と4桁ごとに位が上がるので、3桁区切りのカンマの書き方と読みの区切りがずれることが、学習者のつまずきの中心になります。ここで読みを固めておくと、グラフを説明する言葉(第6課)や「3時間はかかる」のような数量の言い方(第7課)に進んだときに、数ではなく言い方に集中できます。
接続
(文型ではない)
形
万・億の区切り(1,200万=せんにひゃくまん)小数(0.5=れいてんご)分数(3分の1)割合(30%=さんじゅっパーセント/3割)概数(約・およそ・〜前後・〜以上)
導入
- 学生の国の数字で学生の国の人口・面積・物の値段を言わせ、黒板に数字で書く。「万」の区切りで止まる学生が多いので、4桁ごとに区切る日本語の数え方を英語の3桁区切りと並べて見せる。
- 統計の文を読ませる短い統計文(「回答者の約3割が〜」のような自作の文)を読ませ、数字の部分だけ声に出させる。読めたら、同じ数を「3人に1人」のように言い換えさせる。
板書案
1,200,000 → 120|0000 → 120万(ひゃくにじゅうまん)
〔赤〕4けたで区切る:万・億
30% = 3割 = 10人に3人
3分の1(さんぶんのいち) 0.5(れいてんご)
〔青〕約・およそ・〜前後・〜以上(「約〜ぐらい」は重ねない)
場面と発話(自作)
- 自分の国の人口を日本人に説明する。人口はおよそ7,000万人で、日本の半分ぐらいです。
- アンケートの結果を発表する。回答した人の約3割が、4という数字を避けると答えました。
- 買い物で、値引きの表示を見て友だちに言う。2割引きだから、1万円が8,000円になるね。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
数字だけを書いたカードを配り、読ませる→文に入れて言わせる→概数(約・〜前後)で言い換えさせる、の3段。作文では自分の国の数字を1つ入れることを課題にする。
- 口頭教師が数字カード(35,000/1,200,000/0.25/4分の3/15%/2割)を次々に見せ、全体→個人で読む。慣れたら同じ数に「約」「〜前後」「〜以上」を付けて言わせ、最後に「3割」を「10人に3人」のように言い換えさせる。
- ペア情報差: Aは国の人口・面積・平均気温の表の上半分、Bは下半分だけを持ち、「〜の人口はどのくらいですか」「約〜人です」と聞き合って空欄を埋める。数字はメモせずに聞き取り、最後に表を見せ合って確かめる。
- 産出「数字で見るわたしの国」: 自分の国の数字を3つ(人口・物の値段・割合など)入れた紹介文を5文で書き、発表する。聞く人は数字を1つメモする。教師は万の位の読み、割とパーセントの換算、「約〜ぐらい」の重ね方を見る。
つまずきと手当て
- 「万」を飛ばして3桁区切りで読む(1,200,000を「ひゃくにじゅうまん」と言えない)。4桁区切りの線を引かせる
- 「割」と「パーセント」の換算(3割=30%)
- 「約」と「ぐらい」の重複(「約10人ぐらい」)。どちらか一方でよいと言う
既習の文型との違い
- グラフの言葉(第6課)第6課では「全体の〜%を占める」「横ばいだ」のように、グラフの数がどう変わるかを説明する言葉を扱います。この課は数そのものの読み書きなので、ここで読みを固めておくと第6課では変化の言い方に集中できます。
- (数字)は(第7課)第7課の「3時間は寝たい」の「は」は、少なくともその数という見積もりを表します。この課の概数(約・およそ・〜前後)は数を大まかに言うだけで、話し手の評価は入りません。
関連する文型
語彙の扱い
この課の新出語は 100 語(本文を読むための語 23・練習などの語 77)。1語ずつの意味・いっしょに使う助詞と連語・例文は語彙のページにあります。
数字や縁起に関する語が多い課です。「縁起がいい・悪い」「迷信」「避ける」のような語は、扉の話し合いで学生が使いたがるので、先に出しておくと本文に入りやすくなります。
この課の練習で使う語(2語・意味・連語・例文)
- 避ける いやなもの・危ないものに近づかないようにする
ホテルの部屋番号に4が付いていた。日本人の友だちの反応を説明する。日本では4の付く部屋を避ける人もいる。
- 縁起 これから起きることのよい・悪いの前ぶれ
友だちが新しい財布を買った日について聞いてきた。今日は縁起がいい日だから、財布を買うのにいいらしいよ。
第2課の語彙リスト(100語)新出語の意味・いっしょに使う助詞と連語・例文(自作)を五十音順に
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本文の扱い
国や文化ごとに数字の好き嫌いが違うことを、いくつかの国の例で示す読み物です。大意では「どの国の、どの数字が、なぜ」を表に埋めさせると、扉の表とつながります。精読では「〜という考え」「〜からすると」が本文のどこにあるかを探させ、学習項目1・4の導入に戻します。本文の文はここに載せていないので、手元の教科書で確かめてください。
宿題と次のコマ
チェックシートを宿題に。作文は「私の国の数字」で、「〜というN」「Nからすると」と数字の表現を最低1つずつ使う。次のコマの最初に、作文の数字の読み方だけ全員で確かめる。
よくある質問
第2課「いい数字・悪い数字」は何コマで終わりますか?
90分なら2コマが目安です。1コマ目で扉・本文の大意・ことばと学習項目1〜3、2コマ目で学習項目4〜6と内容の確認・練習まで進めます。数字の読み(学習項目6)に時間がかかるクラスは、チェックシートと作文を宿題に回します。
「〜ほど〜はない」と「AはBほど〜ない」の違いはどう説明すればいいですか?
「AはBほど〜ない」は2つを比べてAがBに及ばないと言う初級の比較、「Bほど〜Nはない」はBがほかのどれよりも上だと言う最上級です。後ろに「もの・こと・人+はない」があるかどうかで見分けさせ、同じ話題で両方の文を作って意味が逆になることを確かめます。
「Nからすると」と「Nにとって」の違いは何ですか?
「にとって」の後ろには「大切だ・難しい」のような評価が来やすく、「からすると」の後ろには「〜と思う・〜だろう」のような判断や意見が来やすいです。「からすると」には、話し方や様子を根拠にして推測する使い方もあります。後ろの述語を見て選ばせるのが分かりやすいです。
「〜ほど」と「〜ぐらい・くらい」はどう使い分けますか?
程度をたとえで言うときは、どちらもほぼ同じ意味で使えます。「ぐらい」は話し言葉に多く、「それぐらい自分でできる」のように軽く見る気持ちを込める使い方もあります。「死ぬほど」のような大げさなたとえは「ほど」で教えると安全です。
「〜というN」の「という」はいつ省けますか?
「習慣・事件」のような名詞は「という」がなくても言えます。「考え・話・うわさ・意見」のように言葉や思考を表す名詞の前では「という」が入るのがふつうで、とくに中身が「〜だ」で終わる文(4は不吉だという考え)や引用のときは省けません。「来月引っ越す話」のように省ける場合もありますが、学習者にはまず「考え・話」の前は「という」を入れると覚えさせ、省ける形はあとで補います。
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。