言語教育の目標をコミュニケーション能力の育成に置く考え方の総称。CLT(Communicative Language Teaching)とも呼ばれる。ハイムズが提唱した「コミュニケーション能力」(文法的な正しさだけでなく、場面にふさわしく使える力)を理論的な支えとし、1970年代のヨーロッパで機能・概念シラバスの開発とともに広まった。
特定の手順をもつ教授法ではなくアプローチ(考え方)である点が重要。教室活動には、情報の差を埋めるインフォメーション・ギャップ、何をどう言うかを学習者が選べる選択権、伝わったかどうかが返ってくるフィードバックという3つの要素が求められるとされる。
重視したのは流暢さと意味のやり取り、犠牲になりがちなのは正確さと文法の体系性である。「文法を教えない教授法」と言い切る選択肢は誤りで、のちにフォーカス・オン・フォーム(意味のやり取りの中で必要に応じて形式に注意を向けさせる)の考え方が補われた。
「週末にしたこと」をペアで話す活動で、学習者Aは自分の週末のメモを持ち、Bはそれを見ずに質問して聞き出す。Bは聞いた内容をクラスに報告する。どの表現で尋ねるかは学習者に任され、相手が答えられたかどうかで伝わったかが分かる。情報の差・選択権・フィードバックがそろった活動の一例である。
同じ依頼でも、友人に「ペン貸して」と言うのと、先生に「ペンをお借りしてもよろしいでしょうか」と言うのとでは、場面へのふさわしさが違う。文法的に正しいだけでなく、相手や場面にふさわしく使える力を育てることが、この考え方の中心にある。敬語の形を知っていても、どの相手にどれを選ぶかが分からなければ、やり取りはうまくいかない。
読んだ用語を1冊で引き直す・体系で押さえ直すなら。