仮名「ん」で書かれる音で、1拍を占める特殊拍の一つ。音韻論的には一つの音素 /N/ とされるが、実際の発音は後続する音の調音点に同化して変わる。
「さんぽ」「かんぱい」など両唇音の前では [m]、「さんだい」「かんたん」など歯茎音の前では [n]、「さんか」「りんご」など軟口蓋音の前では [ŋ]、母音や半母音・摩擦音の前(「しんや」「ほんや」)では鼻母音になり、語末では口蓋垂の [ɴ] になる。
和語・漢語では語頭に立たないことも押さえたい。学習者は「ん」を1拍と数えられずに「こんにちは」を短く発音したり、同化ができずに「さんぽ」を [sanpo] のまま発音したりする。撥音は拍とアクセントの指導の要になる音である。
学習者が「きんえん(禁煙)」を「きねん」のように発音すると、「記念」と聞き分けられなくなる。母音の前の「ん」は舌をどこにも付けない鼻母音に近い音なので、舌先を歯茎に付けると次の母音と結びついて「ね」になってしまう。「き・ん・え・ん」と4拍を手拍子で数えながら、口を閉じずに鼻へ息を抜くよう練習させる。
「ほんや(本屋)」が「ほにゃ」のように聞こえるのも同じ原因で、「ん」で舌先を歯茎に当て、次の「や」と結びつけてしまうことによる。仮名では一つの「ん」でも、後ろに何が来るかで口の構えが変わることを、「さんぽ」「さんど」「ほんや」の比較で示すと気づかせやすい。鏡を使って唇の動きを見せるのも、自分の発音を確かめる手がかりになる。
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