一つの言語の内部にある、地域・話し手・場面によって異なる言い方のまとまり。英語の variety の訳語で、地域の方言も共通語も、あらたまった言い方もくだけた言い方も、それぞれ体系をもった「変種」としてとらえ、優劣をつけないのが社会言語学の立場である。
話し手の側によって決まる変種を使用者による変種といい、話し手の出身地域による地域方言と、年齢・性別・職業・社会階層などの属性による社会方言がこれにあたる。これに対し、場面のあらたまり度や媒体によって選ばれる変種は使用による変種(スタイル・使用域)と呼ばれる。日本語学でいう位相は、話し手の属性や集団による違いと、場面や様式による違いの両方にまたがって使われることが多く、範囲は論者によって異なる。
「変種のうち一つだけが正しい言語で、他はそれが崩れた形である」という見方はとらない。どの変種にも体系性があり、優劣ではなく機能の分担としてとらえる、というのが基本姿勢。
同じ人が一日の中で、家族には地元の方言で「はよ来て」と言い、取引先には「お早めにお越しください」と言い、友人へのメッセージでは「早く来てー」と打つ。話し手の出身による違い(地域方言)と、場面や媒体による違い(スタイル)が重なり合い、一人の中にも複数の変種がある。
教科書の会話は、ふつう共通語のあらたまった変種で書かれている。しかし学習者が地方の職場で働き始めると、周りの人が話す方言や、くだけた話し方に戸惑うことがある。教える変種を一つに決めることと、ほかの変種を「間違い」として扱わないことは、両立させる必要がある。
読んだ用語を1冊で引き直す・体系で押さえ直すなら。