いったん知ってしまうと、知らなかったときの状態を思い出せなくなるという認知の偏り。
「この程度は説明しなくても分かるはず」という前提のもとに説明が省かれ、学習者が置き去りになる——教える側が陥りやすい偏り。対策は、既有知識を確かめてから始めること、そして学習者の質問を「分かっていない証拠」ではなく説明の設計を直す手がかりとして受け取ること。
日本語を母語とする教師にとって「行って」という形はあまりに当たり前なので、て形の作り方を説明するとき、「行く」が規則どおり「行いて」にならない例外であることに触れ忘れることがある。学習者が「行いて」と書いてきて初めて、説明に抜けがあったと気づく。自分には自明なことが知らない人には自明でないと想像しにくいのが、知識の呪縛である。
教案を書くときに、その日の項目に入る前に学習者が知っている必要があることを書き出しておく、授業の初めに短い確認問題で既習事項を確かめる、同僚に説明を聞いてもらい分かりにくい点を指摘してもらう、といった方法は、知識の呪縛による説明の抜けを見つける手立てになる。
読んだ用語を1冊で引き直す・体系で押さえ直すなら。