より基本的で制約が少なく、頻度が高く、習得も早い側を無標、特別な条件を伴う側を有標と呼ぶ捉え方。日本語では、肯定に対する否定、単数に対する複数、能動に対する受動が有標の側にあたる。
習得研究にも取り込まれ、無標のものは習得されやすく有標のものは習得されにくい、母語の無標の特徴は転移しやすい、といった予測に使われる。母語と目標言語の差の大きさだけでは誤りを予測できないという対照分析仮説の限界を補う視点でもある。
「有標=難しい/無標=易しい」と単純に置き換えるのではなく、その体系の中で基本かどうかという位置づけの話だと押さえる。何が無標かは言語によって変わりうる。
「この山はどのくらい高いですか」は、山が高いか低いかに関係なく高さを尋ねるのに使える。一方「どのくらい低いですか」は、低いことが前提になっている場面でしか使いにくい。このとき、制約の少ない「高い」が無標、条件を伴う「低い」が有標の側にあたる。身近な対で有標性を確かめられる例である。
英語の複数形 books は、単数の book に -s を付けて作り、形のうえでも単数が基本になっている。日本語の「学生たち」も「学生」に「たち」を付けた形で、複数を示す側に形が加わる。ただし日本語では「学生」だけで複数の人を指すこともでき、数の区別をどこまで示すかは言語によって違う。
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