言語習得には脳の発達と結びついた適切な時期があり、思春期ごろを過ぎると母語話者並みの到達が難しくなるとする仮説。レネバーグ(Lenneberg)が母語獲得について論じたものが、第二言語習得にも援用されている。
年齢の影響がもっとも強く現れるとされるのは音声面で、語彙・読解・語用などの力は成人後も伸び続ける。また学習の初期段階では、認知能力や学習経験を活かせる成人の方が進度が速いという報告もあり、「子どもがあらゆる面で有利」という単純な話ではない。
「一定年齢を過ぎると習得は不可能だと証明されている」という言い切りはひっかけになる。あくまで仮説であり、境界の年齢や適用範囲には議論がある。成人学習者には、母語話者並みの発音ではなく十分に通じる明瞭さと生活目的に即した目標設定を促すのが適切な支援になる。
10歳で来日した子どもと30歳で来日した親が同じ年数日本で暮らした場合、発音は子どものほうが母語話者に近くなりやすいとされる。一方、来日後しばらくは、文法の説明を理解して使える親のほうが速く伸びることもある。臨界期仮説が主に問題にするのは前者のような長期的な到達度であり、初期の進み方とは分けて考える必要がある。
成人の学習者が「もう若くないから発音は無理だ」と言うとき、教師は臨界期仮説を根拠に諦めさせるのではなく、伝わりやすさを目標にした練習を提案できる。アクセントや長音・促音など意味の区別に関わる部分に絞って練習すると、母語話者と同じでなくても、聞き手にとって分かりやすい発音に近づけることができる。
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