日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

会話の含意と前提(かいわのがんいとぜんてい)

区分5 言語 ・ 日本語教員試験の用語

言葉として明示していないのに伝わる意味が含意。グライス(Grice)は、会話が協調の原理のもとで行われるとし、量(過不足なく)・質(真であることを)・関係(関連あることを)・様態(明瞭に)の4つの格率を立てた。格率にわざと違反すると、聞き手はその裏を読んで会話の含意を引き出す。

「一緒に行きませんか」に「あした試験があるんです」と返して断りを伝えるのが典型例で、これは関係の格率に一見違反することで成り立っている。含意はあとから取り消せる(「あした試験があるんです。でも行きます」)のが特徴である。

これに対し前提は、文が成り立つために前もって真とされている情報で、否定しても保たれる点が含意と異なる。「太郎はたばこをやめた」も「やめていない」も、どちらも「以前は吸っていた」を前提とする。前提の押しつけ(「いつから知っていたんですか」)が相手を縛る働きをもつ点も、談話分析で扱われる。

提唱・出典: グライス(Grice)
具体例

同僚に「この資料、きょう中に終わりそう?」と聞かれて「午後はずっと会議なんです」と答えると、問いに直接は答えていないが、「きょう中には終わらない」という意味が伝わる。関係のないことを言っているように見えても、聞き手が関係の格率を前提に推論することで含意が生まれる。断りを直接言わずに理由だけを述べる言い方は日本語の会話で多く、学習者が意図を読み取れないこともある。

「田中さんの息子さんは今年大学に入った」は、「田中さんには息子がいる」ことを前提にしている。「田中さんの息子さんは今年大学に入らなかった」と否定しても、息子がいることは前提として残る。言い直しで取り消せる含意とは、この点で性質が違う。読解では、筆者が前提として持ち込んでいる情報に気づかせる手がかりにもなる。

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