コースデザインが学期全体の設計だとすれば、授業計画はその日の45分・90分をどう組み立てるかという設計です。そして教育実習は、その設計を実際に人の前で動かしてみる場になります。ここでは教案の書き方から実習の段階、終わったあとの振り返りまでを一本の線で見ていきます。
授業計画を書き起こしたものが教案です。多くの様式に共通して並ぶのは、その時間の目標、対象と既習項目、時間配分、教師の活動と学習者の活動、使う教具・教材、板書計画、そして評価の観点です。
要になるのは目標の書き方です。「て形を教える」のように教師がすることを書くのではなく、「〜てもいいですかを使って許可を求められる」のように学習者ができるようになることを書きます。Can doの発想がここに入ってきます。目標が行動として書けていれば、そのまま評価の観点になります。
時間配分は、書いておくと崩れたときに気づけるところに意味があります。導入に時間を取られて練習が削られる、という失敗は教案があるからこそ検知できます。教案はそのとおりに進めるための台本ではなく、ずれたことに気づいて調整するための地図だと考えると扱いを誤りません。
文型を扱う授業の基本の流れが導入 → 基本練習 → 応用練習 → まとめです。まず意味と形を分からせ、次に形を確実にし、最後にその形を使って自分のことを言わせる、という順で進みます。
導入では、絵・実物・場面設定を使って、その文型が使われる状況を作ります。直接法では未習の語を使わずに意味をつかませることが求められ、既習の語彙と文型でどう説明するかが腕の見せどころになります。ここで長々と文法の説明をしてしまうのがよくある失敗です。
基本練習は形を定着させる段階で、反復・代入・変形といったパターン・プラクティスがここに置かれます。応用練習は、その形を使って実際にやり取りをする段階で、インフォメーション・ギャップのあるタスクやロールプレイが向きます。基本練習で止めてしまうと「作れるが使えない」まま終わります。
この流れは提示・練習・産出(PPP)の型として説明されることもあります。ただし、すべての授業がこの順に進むわけではありません。課題を先に与えて必要な形に気づかせるTBLTのような組み立てもあり、唯一の正しい順序ではない点は押さえておきます。
| 段階 | ねらいと典型的な活動 |
|---|---|
| 導入意味と形をつかませる | 絵・実物・場面設定。未習語を使わずに意味を示す。説明は短く |
| 基本練習形を定着させる | 反復・代入・変形などのパターン・プラクティス。正確さが目標 |
| 応用練習使ってみる | 情報の差のあるタスク・ロールプレイ。流暢さが目標で、訂正は控えめに |
| まとめ確認と次への橋渡し | できるようになったことの確認、宿題、次回の予告 |
板書は消えていくものなので、あらかじめ設計しておく必要があります。板書計画では、画面や黒板をどう区切るか、何を残して何を消すか、色をどう使い分けるかを決めます。学習者はノートに写すので、板書はそのままその時間の記録になります。
色は、意味を持たせて一貫させることが大切です。新出の文型は赤、活用の変わる部分は青、というように決めておけば、学習者は色から情報の種類を読み取れます。色覚の多様性を考えると、色だけに頼らず下線や囲みを併用するのが安全です。
教具としては、絵カード・文字カード・レアリア(生教材)・スライドなどがあります。レアリアは本物であるがゆえに情報量が多く、注目してほしい点から注意がそれることもあります。何のために使うのかを決めてから選ぶ、という順序は教具でもICTでも変わりません。
登録日本語教員の制度では、必須の教育内容の<28>教育実習にあたる中身を実践研修が受け持ちます。実践研修コアカリキュラムは、①オリエンテーション ②授業見学 ③授業準備 ④模擬授業 ⑤教壇実習 ⑥実践研修全体総括(振り返り)という6つの学習項目で構成されています。いきなり教壇に立つのではなく、見る・作る・試すを経てから立つという順序に意味があります。
授業見学は、ただ座って見ることではありません。何を観察するかを決めて記録を取り、あとで検討できる形にして初めて学びになります。教師の発話量と学習者の発話量、指示の出し方、誤用への対応など、観点を絞って見るのが定石です。
模擬授業は、同じ立場の実習生を学習者役にして行う練習です。短く区切って行う形はマイクロティーチングと呼ばれます。録画して見返すと、口癖・板書の位置・待ち時間の短さなど、自分では気づけない癖が見えます。
教壇実習は、実際の学習者を相手に授業を行う段階です。相手が本物なので、想定していない反応が返ってきます。教案どおりに進まなかったときにどう立て直すかが、この段階でしか学べないところです。
実習でも通常の授業でも、終わったあとの振り返りが結果を左右します。うまくいかなかった点を並べて落ち込むことではなく、何が起きたかを具体的に書き出し、次に何を変えるかを一つ決めるのが振り返りです。
ショーンは、専門職の実践を行為の中の省察(授業をしながらその場で判断を修正すること)と行為についての省察(終わってから振り返ること)に分け、そうした専門職を反省的実践家と呼びました。経験を積むだけでは伸びず、経験を振り返る過程が要る、という考え方です。
振り返りを一人で抱えないための仕組みもあります。実習後の検討会、同僚との授業見学の交換、記録を蓄積するティーチング・ポートフォリオ。そして、課題を立てて手立てを試し、結果を検証して次の周に進むアクション・リサーチは、振り返りを研究の形にまで進めたものです。
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