評価は用語の数こそ多くありませんが、似た言葉を入れ替えるだけで誤答肢がいくらでも作れるため、区分4のなかでも失点しやすい領域です。この記事では「何のために測るのか(目的)」「何を基準に解釈するのか(基準)」「そのテストは信用してよいのか(条件)」という三つの問いに沿って、評価にまつわる用語を一本の線に並べます。個々の定義は用語集で確認できるので、ここでは用語どうしの関係を押さえてください。
評価と聞くと成績づけを思い浮かべますが、試験で問われるのはむしろ目的のほうです。最初に押さえるべきなのが、実施の時期と目的による3分類で、ブルーム(Bloom)に由来します。コースの前・中・後にきれいに対応します。
両端にあたるのが診断的評価と総括的評価です。診断的評価はコースや単元の開始前に行い、学習者のレベル・既習状況・つまずきの原因をつかんで指導計画に反映させます。総括的評価は終了後に行い、目標がどこまで達成できたかを判定します。期末試験や修了認定がこれにあたり、成績づけや資格付与といった判定が主目的になります。
その間に入るのが形成的評価です。コースの途中で行い、結果を指導と学習の改善に生かします。毎回の小テスト、宿題の点検、教室での観察、学習者自身のチェックなどが含まれます。順位をつけることが目的ではなく、「多くの学習者がつまずいた項目を次の授業で扱い直す」といった教師側の行動の変化に結びついて初めて、形成的評価として働きます。
ここに、定義を丸暗記しただけでは答えられない論点があります。同じ小テストでも、結果を授業の立て直しに使えば形成的評価、成績に算入すれば総括的評価になります。つまりこの3分類はいつ行うかだけでなく、結果を何に使うかで決まるのです。事例形式の問題は、ほぼこの一点を狙って作られます。
次はテストそのものの分類です。名前は似ていますが、見分ける観点は「何のために測るのか」と「何を出題範囲とするのか」の二つだけです。
コース開始時に学習者を適切なレベルのクラスへ振り分けるのがプレースメント・テスト(組分けテスト)で、時期と目的から見れば診断的評価に位置づきます。振り分けが目的である以上、必要なのは細かい得点の正確さよりレベル差が明確に出ることと、短時間で実施できることです。既習・未習が入り混じる集団を対象にするため、出題範囲を特定のコースの内容に限定しない設計になります。
これに対しアチーブメント・テストとプロフィシェンシー・テストは、出題範囲を学習内容に縛るかどうかで分かれます。前者はそのコースで学んだ範囲を出題範囲とし、シラバスと対応していることが前提です。後者は特定の学習歴や教科書から切り離して、現在の実力そのものを測ります。日本語能力試験(JLPT)やOPI(口頭能力インタビュー)が後者の代表で、どんな学び方をしてきた人でも同じ物差しで測れることが求められます。
| テスト | 目的と出題範囲 |
|---|---|
| プレースメント・テスト組分け | コース開始時にクラス分けをする。出題範囲を特定のコースに限定しない |
| アチーブメント・テスト到達度 | そのコースで学んだ範囲の達成度を測る。単元テスト・期末試験 |
| プロフィシェンシー・テスト熟達度 | 学習歴と無関係な実力を測る。JLPT・OPI |
| 適性テスト予測 | 言語学習の向き不向きを、学習を始める前に予測する |
同じ得点でも、何と比べるかで意味が変わります。ここを分けるのが集団基準準拠テストと目標基準準拠テストという対で、それぞれ相対評価・絶対評価と呼ばれるものにあたります。
注意したいのは、どちらかが優れているわけではないという点です。「相対評価のほうが客観的で公平だ」という趣旨の選択肢は誤りで、目的によって使い分けるものです。限られた枠に振り分けたいなら集団基準、修了要件を満たしたかを判定したいなら目標基準、というように選びます。
現在の日本語教育がどちらへ寄っているかも押さえておきましょう。Can doで「何ができるか」を示す日本語教育の参照枠は、基本的に目標基準準拠の発想に立っています。到達目標を先に言葉にしておき、そこに届いたかどうかで判断する、という流れです。
| 基準 | 結果の解釈のしかた |
|---|---|
| 集団基準準拠テストNRT・相対評価 | 受験者集団の中での位置で解釈する。偏差値・順位。上位何名を選ぶといった選抜に向き、得点が散らばるよう難易度が調整される |
| 目標基準準拠テストCRT・絶対評価 | あらかじめ定めた到達目標に届いたかで解釈する。全員が合格することもあり得る。到達度の把握や資格認定に向く |
テストを作ったあと、それを信用してよいかを判断する物差しが四つあります。ここが評価分野で最も繰り返し問われる部分です。
妥当性は、そのテストが測りたい能力をきちんと測れているかという性質です。会話力を測りたいのに漢字の書き取りで判定する、読解力を測るつもりが背景知識だけで解けてしまう——こうした場合に妥当性が低いと言います。出題内容が範囲を偏りなく代表しているかを問う内容的妥当性、別の指標との一致を問う基準関連妥当性、測ろうとする能力の理論的な構成と合っているかを問う構成概念妥当性に分けて論じられます。
信頼性は、結果がどれだけ安定しているかという性質です。同じ受験者が別の日に受けても、別の採点者が採点しても、ほぼ同じ結果になるなら信頼性が高いと言えます。作文やスピーチのように採点者の判断が入るものでは採点者どうしの一致が問題になり、採点基準を明文化すること(ルーブリックの作成)と採点者訓練が対策になります。項目数を増やす、実施条件をそろえる、といった手立ても信頼性を上げます。
この二つはしばしば緊張関係に立ちます。信頼性を上げようとして採点しやすい客観問題ばかりにすると、話す力や書く力を測れなくなって妥当性が下がる。逆に、実際の場面に近い課題を出せば妥当性は上がるものの、採点のぶれが大きくなって信頼性が下がる。「信頼性が高ければ良いテストだ」と言い切れないのはこのためです。
残る二つのうち真正性(オーセンティシティ)は、教材や課題が教室の外の現実の言語使用にどれだけ近いかという性質です。実際の時刻表を読んで乗り継ぎを考える、本物の求人広告から条件に合うものを選ぶ、といった課題は真正性が高く、実際にできることを見取るパフォーマンス評価の根拠になります。そして実用性は、実施のしやすさ・費用・採点の手間です。理論上は理想的でも、現場で回せないテストは使えません。評価論の基本姿勢は、この四つのバランスで判断することにあります。
測り方の面では、直接テストと間接テストという区別もあります。話す力を測るのに実際に面接で話させるのが直接テスト、文法の多肢選択問題で話す力を推し量るのが間接テストです。直接テストは真正性が高い一方、採点に手間と訓練がかかり実用性が下がります。間接テストは大人数に実施しやすく採点も安定しますが、測りたい能力そのものからは遠くなるため妥当性が下がりやすい。ここでも4条件のトレードオフが働いています。
| 条件 | 問うていること |
|---|---|
| 妥当性測りたいものを測れているか | 何を測っているか。会話力の測定に漢字の書き取りを使えば妥当性は低い |
| 信頼性結果が安定しているか | 誰が採点しても、いつ受けても同じ結果になるか |
| 真正性現実に近いか | 課題が教室の外の実際の言語使用に近いか |
| 実用性実施できるか | 時間・費用・採点の手間。現場で回せるか |
1回のテストでは、書き直しながら伸びていく過程や、教室の外で起きた学びは見えません。そこで用いられるのが、テストに代わる、あるいはテストを補う評価——代替的評価(オルタナティブ・アセスメント)です。
その代表がポートフォリオ評価です。作文・録音・活動の記録・振り返りシートなどの学習成果物を継続的に蓄積し、その全体から学習の過程と伸びを評価します。要点は、学習者自身が何を入れるかを選び、なぜ入れたかを書くところにあります。集めるだけでは評価になりません。弱点も明確で、時間と手間がかかること、そして評価の信頼性を保ちにくいこと。だからこそ、あらかじめ基準を作っておくこと(ルーブリック)が欠かせません。
同じ流れに、学習者が自分の到達を振り返る自己評価と、学習者どうしが互いの成果に意見を返すピア評価があります。教師だけが評価する立場を独占しない、という点でこれらは共通しています。
そして、この方向の先にあるのが学習者オートノミーです。目標を設定し、内容や方法を選び、進み具合を点検し、成果を評価するところまでを学習者自身が担う能力を指します。ここで最も狙われるのが「教師がいなくても一人で勉強すること」「独学」という誤解で、実際には他者や教師の支援を受けながら育っていく能力です。だからこそ教師の役割が、教え込む存在からアドバイザー・ファシリテーターへと変わる、と説明されます。
自己評価やポートフォリオ、メタ認知ストラテジーの育成、学習者自身がCan doで目標を確かめる仕組みが、この能力を支える具体的な手立てとして挙げられます。評価が「教師が学習者を判定する行為」から「学習者が自分の学びを進めるための情報」へと位置づけ直されている——この転換が、評価分野の全体像です。
この記事の内容を、そのまま解答の道具として圧縮しておきます。
①時期と目的で前=診断/中=形成/後=総括。ただし決め手は結果の使い道。②テストはプレースメント(クラス分け)/アチーブメント(学んだ範囲)/プロフィシェンシー(学習歴と無関係)/適性(予測)の4つ。③解釈の基準は集団基準準拠(相対)と目標基準準拠(絶対)で、優劣ではなく使い分け。④良いテストの条件は妥当性・信頼性・真正性・実用性で、とくに妥当性と信頼性は緊張関係に立つ。⑤テスト以外にポートフォリオ評価・自己評価・ピア評価があり、その先に学習者オートノミーがある。
とくに④は、定義を入れ替えるだけで誤答肢が量産できるところです。「妥当性=何を測っているか」「信頼性=どれだけ安定しているか」の二語で言えるようにしておけば、選択肢は機械的に切れます。細部は用語集の各ページで確認してください。
1語ずつ短く確認したいときは、用語集のページへ。