検定の出題範囲は実施要項の別記に示されています。5区分の下に①〜⑯の区分があり、その下に(1)〜(50)の主要項目が並ぶ三層の構造です。ただし要項には「全範囲にわたって出題されるとは限らない」と但し書きが付いています。ここでは全項目を掲げたうえで、日本語教員試験の出題範囲と何が同じで何が違うのかを確かめます。
実施要項の別記に示されている範囲です。左の列が5区分、真ん中が区分①〜⑯、右が主要項目です。
| 区分 | 区分(①〜⑯) | 主要項目 |
|---|---|---|
| 社会・文化・地域 | ①世界と日本 | (1)世界と日本の社会と文化 |
| 社会・文化・地域 | ②異文化接触 | (2)日本の在留外国人施策 (3)多文化共生(地域社会における共生) |
| 社会・文化・地域 | ③日本語教育の歴史と現状 | (4)日本語教育史 (5)言語政策 (6)日本語の試験 (7)世界と日本の日本語教育事情 |
| 言語と社会 | ④言語と社会の関係 | (8)社会言語学 (9)言語政策と「ことば」 |
| 言語と社会 | ⑤言語使用と社会 | (10)コミュニケーションストラテジー (11)待遇・敬意表現 (12)言語・非言語行動 |
| 言語と社会 | ⑥異文化コミュニケーションと社会 | (13)多文化・多言語主義 |
| 言語と心理 | ⑦言語理解の過程 | (14)談話理解 (15)言語学習 |
| 言語と心理 | ⑧言語習得・発達 | (16)習得過程(第一言語・第二言語) (17)学習ストラテジー |
| 言語と心理 | ⑨異文化理解と心理 | (18)異文化受容・適応 (19)日本語の学習・教育の情意的側面 |
| 言語と教育 | ⑩言語教育法・実習 | (20)日本語教師の資質・能力 (21)日本語教育プログラムの理解と実践 (22)教室・言語環境の設定 (23)コースデザイン (24)教授法 (25)教材分析・作成・開発 (26)評価法 (27)授業計画 (28)教育実習 (29)中間言語分析 (30)授業分析・自己点検能力 (31)目的・対象別日本語教育法 |
| 言語と教育 | ⑪異文化間教育とコミュニケーション教育 | (32)異文化間教育 (33)異文化コミュニケーション (34)コミュニケーション教育 |
| 言語と教育 | ⑫言語教育と情報 | (35)日本語教育とICT (36)著作権 |
| 言語 | ⑬言語の構造一般 | (37)一般言語学 (38)対照言語学 |
| 言語 | ⑭日本語の構造 | (39)日本語教育のための日本語分析 (40)音韻・音声体系 (41)文字と表記 (42)形態・語彙体系 (43)文法体系 (44)意味体系 (45)語用論的規範 |
| 言語 | ⑮言語研究 | (主要項目の記載なし) |
| 言語 | ⑯コミュニケーション能力 | (46)受容・理解能力 (47)言語運用能力 (48)社会文化能力 (49)対人関係能力 (50)異文化調整能力 |
日本語教員試験の出題範囲は、コアカリキュラムの必須の教育内容です。この50項目と、検定の主要項目(1)〜(50)を突き合わせると、ほぼ完全に一致します。5区分の名称も同じです。
違いは<28>教育実習の扱いです。コアカリキュラムには「<28>『教育実習』は『実践研修コアカリキュラム』の内容に該当するものであり、『養成課程コアカリキュラム』の『必須の教育内容』は49項目である」と明記されており、日本語教員試験の出題範囲の一覧には入りません。検定では出題範囲に含まれるので、実践研修コアカリキュラムの6つの学習項目(オリエンテーション・授業見学・授業準備・模擬授業・教壇実習・全体総括)まで押さえておく必要があります。
もう一つ、区分の番号がずれます。養成課程コアカリキュラムは一般目標を15の下位区分とし、コミュニケーション能力は⑮です。検定の出題範囲は⑮言語研究(主要項目の記載なし)を立てるため、コミュニケーション能力が⑯になります。主要項目の(1)〜(50)という番号は共通なので、番号で照合するときは主要項目のほうを見ると混乱しません。
もう一つ、示され方に違いがあります。日本語教員試験は区分ごとの出題割合が公表されています(社会・文化・地域 約1〜2割/言語と社会 約1割/言語と心理 約1割/言語と教育 約3〜4割/言語 約3割)。検定の要項に割合の記載はなく、「全範囲にわたって出題されるとは限らない」とあるだけです。
| 日本語教員試験 | |
|---|---|
| 実施者 | 文部科学大臣 / 公益財団法人 日本国際教育支援協会(JEES) |
| 位置づけ | 国家資格(登録日本語教員)のための試験 / 国家資格のための試験ではない |
| 出題範囲 | 必須の教育内容 / ほぼ同じ50項目(教育実習を含む) |
| 出題割合 | 区分ごとに公表 / 記載なし |
| 構成 | 基礎(120分・100問)+応用(読解100分60問・聴解50問) / 試験1(90分100点)+試験2(約100分80点・音声を含む) |
| 合格基準 | 各区分6割かつ総合8割程度(基礎) / 要項に記載なし |
実施要項には、主要項目の一覧とは別に「各区分における測定内容」が示されています。区分ごとにどんな視点と基礎的知識を持ち、それを日本語教育の実践とどう関連づけられるかが書かれていて、暗記した知識をそのまま出すのではなく、現場と結びつけて使えるかを見る、という姿勢が読み取れます。
たとえば社会・文化・地域では、国際関係論・文化論・比較文化論的な視点、政治的・経済的・社会的・地政学的な視点、宗教的・民族的・歴史的な視点が挙げられています。言語と教育では、個々の学習者に対するミクロな視点と、学習を社会の中に位置づけるマクロな視点の両方が求められます。
試験2が区分横断的な設問だとされているのは、この「関連づける能力」を測るためです。用語を一つずつ覚える段階から、事例の中でどれを使うかを選べる段階へ進めるかどうかが分かれ目になります。