必須の教育内容の区分「コミュニケーション能力」の項目の一つで、対人関係能力と並んで教員自身の力を指す。到達目標は「教師として多様な関係者と連携・協力する上で必要となる異文化理解能力や、異文化接触場面における摩擦を調整するコミュニケーション能力について理解し、自らの異文化調整能力を向上させることができる」。
誤解が起きたときに、どちらかを一方的に直させるのではなく、何が食い違っているのかを見えるようにするのが中心にある。学習者どうしの摩擦、地域社会との行き違い、機関の規則と学習者の事情の衝突といった場面で働く。
カルチャーショックや異文化適応の知識、認知バイアスへの自覚、エポケー(判断留保)の姿勢がここで生きる。CEFRが言語活動のモードの一つに置く仲介とも重なる(日本語教育の参照枠は仲介を今後の課題としている)。
日本語学校で、ある学習者が毎回数分遅れて教室に入るため、ほかの学習者から不満が出たとする。教師がすぐに「遅刻は禁止」とだけ伝えるのではなく本人に事情を聞くと、アルバイトの終わる時間と電車の時刻が合わないことが分かった。何が食い違っているのかを見えるようにしたうえで、機関の規則と本人の事情の間で調整の道を探るのがこの力の働きである。
ごみの出し方をめぐって外国人住民と町内会の間に行き違いが起きたとき、教師が双方の言い分を聞き、決まりの理由を学習者に分かる言葉で説明し、町内会には案内の文がどう読まれていたかを伝える。どちらが悪いかの判断を急がずにいったん保留するエポケーの姿勢が、こうした場面で生きる。
読んだ用語を1冊で引き直す・体系で押さえ直すなら。