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コースデザインとシラバス — 授業を設計する手順

区分4 言語と教育 ・ 日本語教員試験 基礎試験の出題範囲

授業づくりは「何を教えるか」から始まるように見えて、実際には「誰が、何のために学ぶのか」から始まります。区分4のコースデザインは、この順序を問う分野です。個々の用語は難しくありませんが、ニーズ分析とレディネス調査のように名前と中身を入れ替えるだけで選択肢が作れてしまうため、取りこぼしやすいところでもあります。この記事では、コースを一つ立ち上げるときに何をどの順で決めるのかを、実際の手順に沿って整理します。

コースデザインとは、何を決める作業か

コースデザインとは、一つの日本語コースを設計から実施・評価・改善まで一貫して組み立てる作業の全体を指します。教科書を選ぶことでも時間割を作ることでもなく、その前提になる目標と内容の枠組みを決めるところから始まる、という点がまず重要です。

標準的には、おおよそ次の順序をたどります。①学習者と社会の側を調べる(ニーズ分析レディネス調査)→ ②到達目標を決める → ③目標に必要な内容を洗い出して並べる(シラバスの設計)→ ④それを時間軸に配置する(カリキュラムの設計)→ ⑤教材を選定・作成する → ⑥各回の授業を設計して実施する → ⑦評価する → ⑧結果を前の段階へ戻す。

大事なのは、これが一方通行ではなく循環することです。評価の結果は次のコースの目標設定に返りますし、途中で学習者の実態がずれていると分かれば内容も組み替えます。最初にすべてを固定してしまう設計は、現実の教室では機能しません。目標から逆算して設計するバックワードデザインの発想も、この循環を評価の側から言い直したものだと考えると位置づけやすくなります。

そして、この作業の出発点にあるのが調査です。目標を決める前に、学習者を調べる——順序を逆にした選択肢(教材を決めてから目標を立てる、など)は、それだけで切れます。

ニーズ分析とレディネス調査 — 「これから」と「いま」

調査は二種類あり、その区別が区分4でも最頻出です。分かれ目は時間の向きだと考えると迷いません。ニーズ分析は「これから何ができるようになる必要があるか」を、レディネス調査は「いまどういう状態か」を調べます。

ニーズ分析で見るのは、学習者が日本語を何のために、どんな場面で、どう使うのかです。技能実習生なら作業指示の理解と報告、留学生なら講義の聴解とレポート、介護分野なら記録の記入と利用者との会話、というように必要な力はまるで違います。ここで抜けやすいのが、学習者本人の希望だけが対象ではないという点です。雇用主・受入れ機関・地域社会など、周囲が求めているものも含めて見ます。

レディネス調査で見るのは、学習を始めるための準備状態です。学習歴と現在の日本語力、母語と既習の外国語、母語の文字体系(漢字圏かどうか)、これまでに受けてきた教育や慣れた学習スタイル、学習にあてられる時間、通学の条件、動機や不安——つまり「必要」ではなく「条件」の側を調べます。

二つは同じ調査票で同時に取ることも多く、実務では地続きです。それでも目的が違うことは押さえてください。ニーズ分析はコースの目標を決め、レディネス調査はその目標に至るための方法と現実的な負荷を決めます。同じ「N3合格」という目標でも、漢字圏の学習者と非漢字圏の学習者では、置くべき時間配分がまったく変わります。

調査何を調べるか
ニーズ分析これから=必要何のために日本語が必要か。どんな場面で、どう使うのか。学習者本人の希望に加え、雇用主・学校・地域社会が求めるものも対象になる
レディネス調査いま=条件学習歴・現在の日本語力・母語・文字体系・教育背景・学習スタイル・使える時間・動機など、学習開始時点の準備状態
最頻出のひっかけ「レディネス調査とは、学習者が何のために日本語を学ぶのかを調べることである」という説明は誤り。それはニーズ分析です。ニーズ=必要(これから)/レディネス=準備(いま)。この一組の入れ替えは区分4で最も作りやすいひっかけなので、必ず時間の向きで確認してください。

シラバスとは — 何を並べるかの単位

目標が決まったら、そこに到達するために何を扱うかを洗い出して並べます。この教育内容の一覧がシラバスです。

シラバスで決まるのは、何を項目として立て、どういう順で並べるかです。同じ「レストランで注文できるようになる」というゴールでも、「〜をください」「〜はありますか」という文型を単位にするのか、「レストランで」という場面を単位にするのか、「依頼する」「確認する」という言語の働きを単位にするのかで、コースの姿はまったく変わります。単位の取り方そのものがシラバスの種類だ、と理解しておくと次の節が楽になります。

なお、シラバスとカリキュラムは同じではありません。シラバスは「何を扱うか」の項目一覧、カリキュラムはそれを週や課ごとに時間の中へ配置した実施計画です。買い物リストと調理の段取りの関係だと考えると、混同しません。

シラバスの種類 — 何を単位に並べるか

代表的な六つを、並べる単位と項目の例で対比します。見分け方はごく単純で、項目が「形」なら構造シラバス、「どこで」なら場面シラバス、「何をするか」なら機能シラバスです。「レストランで」は場所なので場面、「注文する」は言語の働きなので機能、「〜をください」は文型なので構造——項目が何で名指されているかを見れば決まります。試験では種類の名前と例の組み合わせがそのまま問われるので、例のほうから種類を逆算できるようにしておくと確実です。

シラバスの種類並べる単位と項目の例
構造シラバス文型・文法項目文法項目を易しいものから難しいものへ配列する。「〜は〜です」「〜てください」「〜たことがあります」。文法積み上げ型の初級教科書が典型
場面シラバス使用場面言語が使われる場面ごとにまとめる。「空港で」「レストランで」「病院で」「引っ越しの手続き」
機能シラバス言語の働き言語で何をするかでまとめる。「依頼する」「断る」「許可を求める」「謝る」「誘う」
話題シラバストピック話の主題でまとめる。「家族」「仕事」「食習慣」「年中行事」
タスクシラバス達成すべき課題言語を使って成し遂げる課題でまとめる。「電話で予約を取る」「地図を見て道案内をする」。TBLTが立つ土台
技能シラバス技能・下位技能読む・書く・聞く・話すの技能や下位技能でまとめる。「必要な情報を拾い読みする」「講義の要点をメモする」
試験でのねらわれ方「機能シラバスとは『空港で』『病院で』のように場面ごとに項目を立てるものである」という説明は、場面シラバスの説明にすり替わった誤りです。逆に、場面シラバスの説明として「依頼する・断る」を挙げるものも誤り。項目が「形」なら構造シラバス、「どこで」なら場面シラバス、「何をするか」なら機能シラバスと、例から逆算して確認してください。

折衷と後行シラバス、そしてカリキュラム・評価へ

実際の教科書やコースが一種類だけでできていることは、まずありません。文型を軸にしながら場面と話題を組み合わせる、というように複数を併用するのが普通で、これを折衷シラバス(複合シラバス)と呼びます。「初級は構造中心、中級以降は話題やタスク中心へ」といった重心の移動もよく見られます。

決める時期にも用語があります。コース開始前に作っておくものが先行シラバス、コースを進めながら学習者と相談して決めていくものが可変シラバス(プロセスシラバス)、そして後行シラバスは、コース終了後に実際に扱った内容を記録として残したものです。「後行シラバス=コースの後半で使うシラバス」と読ませる選択肢が作れるので注意してください。

シラバスが決まると、それを週・課・時間に割り付けるカリキュラムの作業に移り、そこで初めて教材の選定と各回の授業設計が具体化します。市販教科書を使う場合も、その教科書のシラバスが自分のコースのニーズと合っているかを点検し、足りない部分を補います。教科書選定はコースデザインの一部であって、出発点ではありません

最後に評価がつながります。開始時のプレースメント・テストや診断的評価はレディネス調査の延長にあり、途中の形成的評価は指導を修正するために、終了時の総括的評価は目標に到達したかを確認するために行われます。そしてその結果は次のコースのニーズ分析と目標設定に戻される——コースデザインが循環だというのは、この意味です。

試験に向けての整理

この記事の内容を、解答用に圧縮しておきます。

コースデザイン=調査 → 目標設定 → シラバス → カリキュラム → 教材 → 授業 → 評価 → フィードバック、の循環。②ニーズ分析=これから何が必要か(目標)/レディネス調査=いまどういう状態か(条件)。③シラバス=何を扱うかの項目一覧/カリキュラム=それを時間に配置した実施計画。④種類は並べる単位で決まる。構造=文型、場面=どこで、機能=何をするか、話題=主題、タスク=課題、技能=技能。⑤実際は折衷シラバスが普通。後行シラバスは実施後の記録で、前半・後半の話ではない。⑥評価の結果は次の設計に戻る。

この六点が言えれば、コースデザインまわりの選択肢は名前と中身の照合だけで切れます。個々の用語は用語集の各ページで確認してください。

この記事に出てくる用語

1語ずつ短く確認したいときは、用語集のページへ。

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