その方言の話者ではない人が、場を和ませる・ツッコミを入れる・キャラクターを演出するといった目的で、一時的に方言らしい言い方を借りて使う現象。田中ゆかりが名づけた。
「なんでやねん」「〜だべ」のように、実際の地域社会の言語体系ではなくメディアを通じて共有されたステレオタイプが借りられる点が特徴で、役割語と同じ仕組みの上に成り立っている。
生活の言語としての方言(地域方言)と、演出の資源としての方言(バーチャル方言)は別物だという整理が要点。方言が衰退の一途をたどるという単純な図式への反証としても取り上げられる。
東京出身の会社員が、同僚の冗談に「なんでやねん」と返したり、寒い日に「しばれるべ」と言ったりする。本人は関西方言や北海道の方言の話者ではなく、その地域の言葉の体系を使っているわけでもない。場を盛り上げたり、自分を面白く見せたりするために、メディアで知った方言らしい言い方を一時的に借りている。
日本語学習者がテレビのお笑い番組で覚えた「なんでやねん」を教室で使うことがある。これを関西方言を身につけた結果と見るより、日本人がツッコミとして使う決まった言い回しを借りていると見るほうが実態に近い。地域の人の日常の方言と、演出として借りられる方言を区別すると、方言の扱い方を考えやすくなる。
読んだ用語を1冊で引き直す・体系で押さえ直すなら。