母音が声帯の振動を伴わずに発音される現象。日本語では狭母音の /i/ /u/ が無声子音に挟まれたとき(「きした」の「き」、「すき」の「す」、「ふたつ」の「ふ」)や、無声子音に続いて語末に来るとき(「です」「ます」の「す」)に起こりやすい。
東京方言をはじめ東日本で顕著で、近畿方言では起こりにくいという地域差がある。アクセント核のある拍では起こりにくい、無声化の条件が連続するときは一方だけが無声化しやすい、といった傾向も知られる。広母音の /a/ はほとんど無声化しない。
無声化は義務的な規則ではないが、起こらないと不自然に響くことがある一方、学習者には「音が抜けている」と聞こえて聞き取りを妨げる。無声化しても拍としては保たれている点が重要で、「母音が消える」と説明するのは誤り。
東京の話者が「すきです」と自然に言うと、最初の「す」と文末の「す」は母音の声がほとんど聞こえない。学習者には「す」が子音だけのように聞こえ、「好き」を聞き取れないことがある。聞き取りの練習では、無声化した拍も1拍分の長さをもって残っていることを、手をたたきながら確かめさせる。
学習者が「ありがとうございます」の最後の「す」まで母音をはっきり [su] と発音すると、文法も語彙も正しいのに少し硬く聞こえることがある。無声化は義務的な規則ではないので誤りとは言えないが、自然さに関わる点として、聞き取りと発音の両方で取り上げておきたい現象である。発音で無理に無声化させるより、まず聞き取れるようにすることを優先するとよい。
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