日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

「日本語教育の参照枠」の全体像

区分4 言語と教育 ・ 日本語教員試験 基礎試験の出題範囲

参照枠は、試験対策としてもっとも取りこぼしの多いテーマです。CEFRの6レベルは知っていても、その内側にある「4つの能力」「5つの言語活動」「Can doの4種類」まで整理できている人は多くありません。ここが数字で問われる区分なので、構造を一度きちんと通しておくと得点が安定します。

参照枠とは何か — まず主体と年を押さえる

「日本語教育の参照枠」は、文化審議会国語分科会(文化庁)が令和3年(2021年)に報告としてまとめた、日本語の学習・教授・評価のための枠組みです。まず「誰が・いつ」を固定しておくと、似た枠組みとの混同を防げます。

特徴は三つあります。第一にCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)を参考にしていること。第二に、CEFRのレベル尺度(A1〜C2)・言語活動別の熟達度・言語能力記述文をほぼそのまま用いていること。第三に、CEFRにはない文字・漢字の学習に関する方針を独自に示していることです。三つ目が「日本語ならでは」の部分になります。

混同しやすい枠組みを並べておきます。策定した組織と年が、そのまま選択肢の入れ替えに使われます。

枠組み策定と位置づけ
CEFR2001年欧州評議会が20年以上かけて開発し公開。多くの言語に翻訳され、レベル尺度A1〜C2の原典となっている
CEFR補遺版2018公開/2020確定いわゆるCV2020。参照枠には部分的に反映。能力記述文の中の「母語話者」を「熟達した日本語話者」と言い換えた点が代表例(レベルの名前ではない)
JF日本語教育スタンダード2010年国際交流基金が公開。理念は「相互理解のための日本語」。課題遂行能力と異文化理解能力が螺旋的に育つと捉える
日本語教育の参照枠令和3年(2021年)文化審議会国語分科会の報告。上記を踏まえた日本国内向けの枠組み
注意したいひっかけ参照枠が主に基準としたのはCEFR2001で、補遺版に全面的に準拠したわけではありません。またJFスタンダードは国際交流基金・2010年、参照枠は文化審議会国語分科会・2021年です。主体と年を入れ替えた選択肢が出ます。

土台にある言語教育観

参照枠の背後には二つの考え方があります。ひとつは行動中心アプローチ。学習者を、課題(タスク)を遂行する社会的存在として捉える見方です。ここでいう課題には、言語を使わない行動も含まれます。「言語の練習をする人」ではなく「言語を使って何かをする人」として見る、という転換です。

もうひとつが複言語・複文化主義です。人が持つ複数の言語能力は、別々の引き出しに分かれているのではなく、個人の中でひとつの大きな能力として連関していると考えます。母語も第二言語も、必要に応じて常に利用可能な資源だという捉え方です。

言語教育観の三つの柱は、CEFRの「社会的存在」「部分的能力」「複言語主義」という三つの概念を、日本語教育の文脈から捉え直したものです(行動中心アプローチも、CEFRがこの三つの概念を基盤として示したもの)。①学習者を社会的存在として捉える ②「できること」に注目する ③多様な日本語使用を尊重する。三つ目は、母語話者と同じであることを最終ゴールにしない、という宣言です。ここは理念の問題に見えて、そのまま出題されます。

熟達度を構成する4つの能力

参照枠は、CEFR(2001)の整理を引いて、熟達度を4つの能力で示しています。名称を正確に区別できるかが問われます。

能力中身
一般的能力言語に限らない土台。叙述的知識、技能とノウハウ、実存的能力、学習能力の4つに分かれる
コミュニケーション言語能力言語そのものの能力。言語能力・社会言語能力・言語運用能力を含む
コミュニケーション言語活動実際に言語を使って行う活動。参照枠は5つの言語活動(聞く・読む・話す(やり取り)・話す(発表)・書く)を設定。CEFRは受容・産出・やり取り・仲介の4モードで捉える
コミュニケーション言語方略うまくいかないときに使う手立て。言い換え、聞き返しなど
言語能力の6つの下位区分コミュニケーション言語能力のうち「言語能力」はさらに語彙・文法・意味的・音声・正書法・読字の6つに分かれます。このうち意味的能力と読字能力にはCan doが示されていません。「6つすべてにCan doがある」という選択肢は誤りです。

5つの言語活動とCEFRの4モード — 仲介は「今後の課題」

CEFRは、言語活動を従来の「読む・書く・聞く・話す」の4技能ではなく、受容・産出・やり取り・仲介の4つのモードで捉えます。

参照枠は、このうち受容・産出・やり取りについて、5つの言語活動(聞くこと・読むこと・話すこと(やり取り)・話すこと(発表)・書くこと)を設定しています。言語活動別の熟達度も活動Can doも、この5つごとに示されます。仲介については、CEFR2001を主に参考にしたため「今後の課題」とされ、Can doは示されていません(報告 p.76 脚注29)。「参照枠は4モードで言語活動を設定している」「参照枠は仲介のCan doを示している」とする選択肢は誤りです。

CEFRのモード中身と、参照枠の言語活動
受容聞く、読む → 参照枠の「聞くこと」「読むこと」
産出話す(発表)、書く → 参照枠の「話すこと(発表)」「書くこと」
やり取り会話やメールなど、相手とやり合う活動。受容と産出の単純な足し算ではない → 参照枠の「話すこと(やり取り)」
仲介自分と他者、あるいは他者どうしの間に立って言語をつなぐ活動 → 参照枠では今後の課題(言語活動として設定していない)
CEFRの仲介はどう広がったかここからはCEFR側の話です。CEFR2001では、仲介は主にテクストの仲介(翻訳・通訳・書き換え・要約・記録)を指していました。それがCV2020で「概念の仲介」「コミュニケーションの仲介」へと広がります。背景にあるのが、内容と言語を統合して学ぶCLILの広がりです。「仲介=通訳・翻訳だけ」とする選択肢は、この拡張を落としています。

Can do の4種類と使い方

Can do(言語能力記述文)にも種類があります。活動・方略・テクスト・能力の4つです。ふだん目にするのは活動Can doですが、4種類あることが問われます。

熟達度は、全体的な尺度(6レベル)と、それを5つの言語活動ごとに示した言語活動別の熟達度の、二つの指標で示されます。6レベルはA=基礎段階の言語使用者/B=自立した言語使用者/C=熟達した言語使用者と対応します。細かく見るための枝分かれレベル(.1/.2)が置かれているのはA2・B1・B2で、C1・C2にはありません。

Can doを使うときの注意点も押さえておきましょう(JF日本語教育スタンダードの利用者向けガイドブックなどが示すもの)。Can doだけでは目標設定も評価もできないこと、示されているのは例示であって網羅ではないこと、そしてレベル方向とカテゴリー方向の両方から見比べること。「Can doリストがあれば評価ができる」という趣旨の選択肢は誤りです。

評価とバックワードデザイン

参照枠は評価について三つの理念を示しています。生涯にわたる自律的な学習の促進・学習の目的に応じた多様な評価手法の提示と活用推進・評価基準と評価手法の透明性の確保です(報告 p.74)。「自立」ではなく「自律」です。テストで測って終わりにしない、という立場が明確に出ています。

そして設計の順序がバックワードデザインです。①目標を決める → ②評価方法を決める → ③授業内容を決める。評価を授業の設計より先に決めるところが要点で、順序を入れ替えた選択肢に注意してください。参照枠の活用のための手引でも「逆向き設計」として紹介されています。

活用のための手引は、Can doを目標として使うときは「いつ・どこで・誰と・何をするのか」まで具体的に定めることが重要だとしています。評価の側はチェックリストやルーブリックへ落とし込みます。

不適切なCan doの見分け方「受身形で文が作れる」のような記述は、Can doとしては不適切です。文法項目ができることを述べているだけで、社会的な文脈で何ができるかを示していないからです。「〜の場面で、〜について、〜できる」の形になっているかで判断します。

試験に向けた押さえどころ

第一に数字。4つの能力、言語能力の6下位、参照枠の5つの言語活動(CEFRの4モードと混同しない)、Can doの4種類、6レベル、枝分かれはA2・B1・B2の3つ。数字は誤答肢が機械的に作れるため、入れ替えに注意が必要です。

第二に主体と年。CEFR=欧州評議会2001年、JFスタンダード=国際交流基金2010年、参照枠=文化審議会国語分科会2021年。この三つの入れ替えに注意してください。

第三に理念に関わる言い切り。母語話者を最終ゴールとしない(最上位の名前は「熟達した言語使用者」)、参照枠は仲介を扱っていない(今後の課題)、やり取りは受容と産出の総和以上、Can doだけでは評価できない、バックワードデザインは評価が先。いずれも「もっともらしい逆」を作りやすいところです。

下のボタンから区分4の練習問題に進むと、ここで整理した内容が選択肢の形で出てきます。

この記事に出てくる用語

1語ずつ短く確認したいときは、用語集のページへ。

参照した一次資料

この記事の記述は、次の公的資料と突き合わせて書いています。制度の細部は必ず原文で確かめてください。

この記事の練習問題(22問)

この記事の内容から作った問題です。1問ずつ解いて、解説まで読めます。

「日本語教育の参照枠」について、最も適切なものはどれか。基礎試験 練習問題 1013
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「日本語教育の参照枠」の特徴に関する記述として、適当でないものはどれか。基礎試験 練習問題 1014
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参照枠が採る行動中心アプローチの説明として、最も適切なものはどれか。基礎試験 練習問題 1015
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CEFRや「日本語教育の参照枠」で、「個人が持つ複数の言語能力は別々に存在するのでは…基礎試験 練習問題 1016
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参照枠で熟達度を構成するとされる4つの能力の組み合わせとして、最も適切なものはどれか…基礎試験 練習問題 1017
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参照枠における「言語能力」の下位区分について、最も適切なものはどれか。基礎試験 練習問題 1018
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参照枠の4つのモードに関する記述として、最も適切なものはどれか。基礎試験 練習問題 1019
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CEFRにおける「仲介」について、最も適切なものはどれか。基礎試験 練習問題 1020
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参照枠で示されるCan do(言語能力記述文)の種類として、最も適切なものはどれか。基礎試験 練習問題 1021
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参照枠の熟達度レベルに関する記述として、最も適切なものはどれか。基礎試験 練習問題 1022
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Can doの利用に関する記述として、適当でないものはどれか。基礎試験 練習問題 1023
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バックワードデザインによるコース設計の順序として、最も適切なものはどれか。基礎試験 練習問題 1024
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言語能力の枠組みに関する記述として、最も適切なものはどれか。基礎試験 練習問題 1258
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日本語教育の参照枠が、能力記述文の中の「母語話者」という表現を「熟達した日本語話者」…基礎試験 練習問題 1259
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4技能の統合に関する記述として、最も適切なものはどれか。基礎試験 練習問題 1291
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ルーブリックに関する記述として、最も適切なものはどれか。基礎試験 練習問題 1301
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「まず何ができるようになればよいかという目標を決め、次にその達成をどう見取るかという…基礎試験 練習問題 1378
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CEFR が言語活動を捉える四つのモードのうち、通訳や翻訳のように言語と言語の間を橋…基礎試験 練習問題 1492
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作文やスピーチの採点で、採点者によって点がばらつくのを抑えるために、「内容」「構成」…基礎試験 練習問題 1511
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「駅の窓口で、行き先と時刻を伝えて切符を買うことができる」のように、ことばの力を、具…基礎試験 練習問題 1552
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国際交流基金が2010年に公開した、日本語の教え方、学び方、学習成果の評価を考えるた…基礎試験 練習問題 1568
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学習者を社会的存在として捉え、できることに注目し、多様な日本語使用を尊重するという言…基礎試験 練習問題 1572
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この記事の練習問題を続けて解く問題演習で、この記事のテーマ(区分「言語と教育」)だけを一問ずつ出題します
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