1603〜1604年にイエズス会が長崎で刊行した日本語・ポルトガル語辞書。約3万語を収め、見出しはポルトガル式のローマ字で表記されている。
布教のために来日した宣教師が、日本語を学び記述するなかで生まれたキリシタン資料の一つ。ローマ字表記であるため、ハ行子音の音価や「開合」の区別など、当時の日本語の発音を知る手がかりになる。同じイエズス会のロドリゲスは『日本大文典』で文法・敬語を体系的に記述した。
この時期の日本語研究の動機は布教であり、日本側が主体ではない。「日本人が外国人向けに編んだ辞書」とする選択肢は誤り。
『日葡辞書』では、ハ行の音がfで書かれている(たとえば「人」はfitoのように表記される)。ポルトガル式のローマ字で書き取られているため、当時のハ行子音が現代の[h]とは違い、両唇を使う音だったと推定できる。仮名からは見えない発音が、ローマ字表記から分かる例である。
見出し語には、日常語のほか、方言や文書語など、使われる場面についての注記がつく語もある。宣教師が説教や会話で日本語を使うために、どの語がどんな場面にふさわしいかを知る必要があったことがうかがえる。辞書が単なる語の一覧ではなく、使い分けの手引きとしても作られていたことが分かる。
読んだ用語を1冊で引き直す・体系で押さえ直すなら。