「合格率62.6%」「67.5%」という数字がよく引かれますが、これは全試験免除者を含んだ全体の数字です。免除なしで基礎試験から受ける人の合格率は、令和6年度が8.7%、令和7年度が35.9%でした。ここでは公表されている合格基準と実績を、自分に関係のある数字として読み解けるように整理します。
実施要項に示された合格基準は次のとおりです。基礎試験の基準が二段構えになっているのがこの試験の特徴です。
| 合格基準 | |
|---|---|
| 基礎試験 | 必須の教育内容で定められた5区分において、各区分で6割程度の得点があり、かつ総合得点で8割程度の得点があること |
| 応用試験 | 総合得点で6割程度の得点があること |
基礎試験は100問なので、総合8割は約80問の正解にあたります。同時に、5区分のどれか1つでも6割を切れば、総合が何点であっても届きません。得意な区分で稼いで苦手な区分を埋める、という戦い方ができない設計です。
応用試験の「総合」は読解60問と聴解50問を合わせた110点満点に対する6割程度です。読解だけで6割という意味ではありません。
文部科学省が公表している実施結果です。ただしこの「合格率」には、試験を1問も解かない全試験免除者(E-1・E-2ルート)が含まれています。これから受験する人が自分の見通しを立てるための数字としては、そのまま使えません。
| 令和6年度 | 令和7年度 | |
|---|---|---|
| 試験日 | 令和6年11月17日 | 令和7年11月2日 |
| 受験者 | 17,655人 | 17,597人 |
| 合格者 | 11,051人 | 11,876人 |
| 合格率 | 62.6% | 67.5% |
同じ実施結果を、試験の免除状況別に分けたものです。ここまで分解すると、自分がどの数字を見るべきかがはっきりします。
| 令和6年度 受験者/合格率 | 令和7年度 受験者/合格率 | |
|---|---|---|
| 全試験受験者(免除なし) | 3,947人 / 9.3% | 3,796人 / 35.7% |
| 基礎試験免除者 | 7,750人 / 61.0% | 10,949人 / 70.0% |
| 全試験免除者 | 5,958人 / — | 2,852人 / — |
| 上2つの合計 | 11,697人 / 43.5% | 14,745人 / 61.2% |
令和7年度の資格取得ルート別の内訳です。かっこ内は令和6年度の数字。
| ルート | 受験者 | 合格率 |
|---|---|---|
| 試験ルート(免除なし) | 3,538人(3,681人) | 35.9%(8.7%) |
| 養成機関ルート | 2,409人(—) | 70.0%(—) |
| Cルート | 6,711人(5,530人) | 70.2%(60.8%) |
| D-1ルート | 1,245人(1,539人) | 67.6%(60.3%) |
| D-2ルート | 584人(681人) | 74.1%(63.7%) |
| Fルート | 258人(266人) | 33.3%(16.5%) |
E-1・E-2ルートは基礎試験・応用試験とも免除されるため、合格率は示されていません。養成機関ルートは、令和6年度の出願時点では登録日本語教員養成機関がまだ存在しなかったため該当者なしでした。
基礎試験から受ける試験ルートとFルートだけが、他より一段低い水準にあります。基礎試験を受けるかどうかが、この試験の難易度をほぼ決めていると言えます。
試験ルートの内訳をもう一段掘ると、この試験の性格がはっきり見えてきます。
令和6年度、試験ルートの受験者3,681人のうち基礎試験に合格したのは323人。そのうち応用試験にも合格したのが322人でした。令和7年度も、基礎試験合格1,309人に対して応用試験合格1,269人。基礎試験を通った人は、ほぼそのまま応用試験も通っています(基礎試験が不合格の場合、応用試験を受験しても採点されません)。
つまり、免除のない受験者にとっての勝負どころは基礎試験です。そして基礎試験の壁は、5区分すべてで6割を取りながら、総合で8割を取るという基準そのものにあります。1区分の取りこぼしが致命傷になる形なので、区分をまたいだ穴の有無を、本番と同じ100問の形で確かめておく価値があります。
免除なしの合格率は、令和6年度の9.3%から令和7年度の35.7%へ大きく動きました。Fルートも16.5%から33.3%へ、ほぼ倍になっています。一方、基礎試験が免除される層の伸びは61.0%から70.0%と穏やかです。動いたのは基礎試験のほうだったということになります。
実施要項が「年度ごとの難易差等により合格基準の調整を行うことがある」と断っているとおり、初年度の水準がそのまま続くとは限りません。9.3%という数字だけを見て身構える必要も、35.7%を見て楽観する理由もない、というのが現時点で言えるところです。基準そのもの(各区分6割・総合8割)は変わっていないので、対策の方向は同じです。